「神楽…?」




先ほどから喋らなくなって静かになった背中の神楽に、声をかける。
けれども返ってくるのは、いつもより熱い規則的な呼吸。


「寝たのか…。」

ズズッとマスクの下で鼻を啜ると、神楽の身体を抱え直してまた歩き出す。
揺れた拍子に腕がとけるかと思ったが、自分の首に巻き付いたまま離れることはなかった。

(ったく…人の気も知らねーで…。)

溢れた苦笑は、ウイルスのせいではない熱を冷ますため。
今日は一日中二人きりかと思った矢先、二人してウイルスにやられるとはは思ってもみなかった。
正直な話、二人きりじゃなくなったことを少し残念に思う自分がおり、片一方ではホッとしている自分がいた。


今まで妹か娘のように神楽を家族として見てきたハズの死んだ魚のような自分の目が、最近では気づいたら神楽を一人の少女として見ていた。
最初の頃はそれこそ戸惑った。面(おもて)じゃいつも通り装ってはいたが、内心じゃ神楽に触れたくて堪らなくなるし、近寄る男全てに嫉妬を抱いた。
でも自覚して受け入れてしまえば、なんてことはない。欲望のままに、『家族』として触れたり抱き締めたりしていたのだ。
都合のいいその言葉は、ともすれば大きな壁にもなってしまう。
この背中で安心しきって眠りこけている少女が自分のそれを知ったら…
最悪の場合万事屋を出ていってしまうだろう。

だから未だに想いを告げることができずにいた。


「うぅん…銀ちゃん…。」


寝言で自分を呼ぶ神楽に、銀時はまた一つ溜め息混じりの苦笑を漏らした。


「へーへー、ここにいますよ。」



愛しい気持ちを込めながら、寝言とわかっているのに相づちを返してやると、眠っている少女が背中越しに笑ったように思えた。



「大好きヨ、…銀…ちゃん。」

「!!」



咄嗟に足を止めながら絶句。
別に自分の好きと同じわけではないだろうけど…。


惜しむらくは背負ったせいで恐らく極上の愛らしい笑みを浮かべる神楽の寝顔が見えないことか。







「…なんつー破壊力。」

(銀さん理性という名のハートが持ちません。)





そして志村家では神楽の隣の布団を死守し通すという。

ウイルス編はおんぶと布団くっつけて寝てるのがなんとも萌えます。
そしてウィルス・ミスが好きです(笑)

なんか上手く表示できてなかったので、2ページ目を急遽作りました。
すいません(汗)

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