殴られた頬を擦り、起き上がるとため息を一つつく。
項垂れたように力無く座っていたが、やがて立ち上がるとぶつけたらしい背中がきしんだ。
「ったくあのゴリラ…動物園に送ってやろうかねィ?」
見なくても大体は想像がついていたくせに、そちらへ目を向けてしまったのは、ほとんど事故のような無意識さ。
見えたのは白衣の後ろ姿に、その向こうにチラリと覗くセーラー服。
(ヤベェ…苦げぇな。)
背を向けて空を見上げれば、恋い焦がれていた蒼い色。
その瞳がついに自分に向くことは無かった。
でも…少しは報われたっていいはずだ。
(サドは打たれ弱いけどねィ…
諦めも悪いんでィ。)
チラリともう一度振り返って二人へと目をやれば、窓の向こうでこちらを睨む死んだ魚のような目。
(お見通しですかィ…。)
グッと睨んでくる方へ、拳を掲げた。
ニィッと口のハシをあげると、親指を立てて手首を返した。
「宣戦布告でさァ。」
そう簡単に諦めてたまるもんかィ。
呟きは誰にも聞こえないが、意図は全て目の前の敵には届いてそうだ。
少し肌寒い屋上を後にしながら、とりあえず沖田は苛立つ気持ちを押さえようと、土方を苛めるために教室へと向かった。
(あーやだやだ…これだからサドは。)
おわり
*
サーセン(汗)