25、集まり




「…それであの人と別れた後に赤司君に出会ったんだね!」

「うん。」


お昼休憩は黄瀬君の「とりあえず、集まろうっス!」の一言で屋上に集合することになった。


この学校にやってきた征ちゃんと私の関係、今までの経緯。赤司君にも初めて話すことばかり。

私の告白から始まったお付き合い。
彼のことが好きで好きでしょうがなくて、毎日、馬鹿みたいに「私のこと好き?」って確認してた。実際のところは、征ちゃんの思考が一つもわからなくて不安だったから。いつも私とは違うところにいる彼に着いて行くのが精一杯で。


「他の男と喋るな。僕だけの側にいろ。」
「なまえは僕のことだけ見てればいいんだよ。」


束縛されるのも苦ではなかった。
でも、言葉にしてみると私と征ちゃんの付き合いは恋人のそれとは少し違ったのかもしれない。
もしも、今でも征ちゃんと続いていたのなら、黄瀬君たちと会話する事すら許されてなかったと思う。


私の話に聞き入っていたせいで、全員して箸を持つ手が止まってる。




「…やっぱり俺はどうも好きになれそうにないっスわー。独占欲強い男はやだっスねー。」

『まあ、俺も人の事は言えないがな。』

「え、赤司っちもなまえっちのこと束縛したいんスか!?」

『…そういうわけではないが……彼女のこと独占したい気持ちはある。』


赤司君は人前では私との関係を会話に絡めることは少ない。征ちゃんのように主張することもない。いつも通り隣に居てくれる。だからこそ、不意に紡がれたその台詞に照れ臭さを感じて頬を赤くしてしまう。

そんな私の反応を目にして、ヒューヒューと茶化してくる黄瀬君と青峰君を赤司君がぎろりと睨みつければ、空気は一転した。



「ま、まあ、とりあえず、上手くやれよなお前ら!」

「何かあれば僕たちがいくらでも協力しますからね。」


「ありがとう。」



みんな私たちのこと見守ってくれてる。私と目を合わせた赤司君も、薄く笑ってる。


ああ、幸せだなって心から思う。





















「……で、赤ちんどうするのー?あの子を略奪するんでしょー?」

「もう指示は出してあるから、焦ることはないさ。」



赤司と紫原と慣れない校舎を一通り散策しながら今後のことを話した。まさか、一年も経たずに洛山高校を離れることになるとは夢にすら見なかったので未だ実感が湧かない。転校自体が不本意だったから余計にそう思うのだろう。


「……お前、一体何をする気なのだよ。まさか彼女に…。」

「僕がなまえに手を出すわけないだろ。彼女は将来僕の妻になるべき女だからね。彼女だけは。」


一つわかったことは赤司は今でもみょうじのことを好いてるということだけ。

……それじゃあ、何故、彼女を突き放したのか、傷つけたのかはわからない。まあ、聞いたところで理解できるはずもないのだが。


「……いい加減、もう一人の赤司のこと、教えてくれてもいいのではないか?」

「だから、僕の偽物だよ。」

「クローンなんて存在するわけないだろ。」

「まだ秘密にしておく。その方が楽しいだろう?」



そう言って赤司が見つめた 4階の窓からは、向かい側の3階校舎の屋上が見えて、みょうじたちが楽しそうにしている様子が伺える。
その中には、赤司にそっくりなあいつの姿もあった。



「…寧ろ、あいつはそろそろ気がつくと思うよ。自分が何者なのか、自分の立場がどれだけ下層に位置するのか。」


「なぜわかる?」


「あいつと僕は繋がってるからね。
……僕がいる限り、あいつはこの世界に必要ないんだよ。」


















今を壊したくないと、本気で願っていたけれど、

何も起こらずに平和に過ごせる訳がなかったの。征ちゃんをよく知る私が一番よくわかっていた。


征ちゃんがこの学校にやってきて3日目。













「なまえちゃん、テツ君が、テツ君が……!事故に遭ったって…!」


一つ目の事件は起きてしまったの。



(私はきっと、あなたのこと一生許せない。)




 

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