「こらぁぁぁこのデブ猫がぁぁ!!!!」
「にゃぁぁぁ!!!」
さっき買ってきたばかりの週間ジャ○プをこのくそ猫はびりびりに破きやがった。買い忘れてて、ラス1だったってのに。
バスケのあの漫画とかめっちゃ続き気になってたのに…だって、ラスボス戦だよ?!俺の今日の楽しみ奪いやがって、絶対ゆるさねえ。
ただでさえフラストレーション溜まってるってのに、こいつはどうやら俺を本気で怒らせたいようだ。猫だからって容赦しねえから。
つーか、こいつ弟だし、手加減は必要ないよね?
襲いかかろうとすれば、デブ猫は助けてと言わんばかりになまえちゃんの胸の中へと飛び込みやがった。
「おそ松くん!いっち君のこといじめちゃだめ!!」
「にゃーん」
最高に苛つく。なにが、にゃーんだよ、お前日本語喋れんだろ。俺のことクズってはっきり言ったよね?ねえ?!なに猫の振り決め込んでんの、なんなのこいつ。
こいつがここにきて、もうすぐ1週間経つけど、なまえちゃんは猫の正体を知らない。だから、もしも、知ってしまったら、今、彼女の抱えてる猫が、彼女のおっぱいにスリスリと頬を摺り寄せてるのは立派なセクハラにあたることだろう。ねえ、おれも触りたいんだけど!
「こわかったねーごめんね、いっち君。」
「にゃーー」
そんでもって、こいつが来てからセックスできてないんですけど。朝から晩までなまえちゃんは一松のことばっかり構ってる。この俺が空気なんですけど?どういうこと?は、ここ、俺の家だよね?家賃は確かになまえちゃんが払ってっけど。でもでも、一緒にここに住もうってきめたよね、なんで、デブ猫に俺の居場所取られてんの。ねえ、なんで、なんで。
「…………なまえちゃんのばーか!もうしらねぇ!!!」
帰るところなんかないし、金もないし、後先考えずに俺は家を飛び出してた。子供みたいにわめく20代男ってこの俺のことですよーそうですよどうせ身体がでっかいだけの餓鬼ですよーだ。しかもニートだし、どうせ人間のクズてすよーだ。でも、クズであることに妙な誇り持ってるし。
あー飲みに行きたい、ビールのみたい飲んだくれたい。ごそごそとポケット漁ったら150円でてきた。ラッキー。
コンビニで一本だけ酒買って、公園のベンチで真昼間から飲んでるとかどこのおっさんだよ。
「あー全然足んねー」
俺が欲しいのはこれじゃない。ぐしゃりと空の缶を潰して、すぐそばにあるゴミ箱へと向けて、ぶん投げた。がこんって缶はゴミ箱にぶつかり床へと落下する。だっせーー。やべー本当にダサいよ、俺。
あーもうなまえちゃんが全然足りない。触りたい、抱きしめたい、キスしたい、セックスしたい。もういっそ、その腕つかんで、無理やり押し倒して、襲っちゃえばいいの?でも、大好きな彼女にんなことできねえし、でもでも、なまえちゃんは一松に夢中だし。あーもう俺はどうすればいいわけ?!
床に落ちてる缶を見つめていれば、突然それを広う誰かが視界に入ってきた。その誰かは缶をゴミ箱に捨てた後、俺の目の前までやってくる。
「……ここにいたんだ。探したよ。」
いつも喧嘩をした後に迎えに来てくれるのは彼女の方だ。つーか俺が一方的にキレるパターンなのだけど。俺って面倒くさい男。自覚はしてますから。
帰ろ?って手を差し伸べるなまえちゃんに、俺はつんけんした態度で「やだ」って返してやった。それも毎回のこと。
「だってさーなまえちゃん猫ばっかり構っててさー俺のこと構ってくれないんだもん。」
ふてくされる俺に君は「かわいい」という。え、今どこにかわいい要素あったの?時たま、彼女の感覚がわからない。ていうかさ、男にかわいいはいっちゃだめだから。なんもうれしくないから。
かわいいっていうならなまえちゃんのがウルトラ級にかわいいから。超絶かわいいから。
「ごめんね?」
少し首をかしげて謝る彼女はあざとすぎるでしょ。
なにそれ、そんなんされたら許すにきまってるじゃん。くいってなまえちゃんの腕を引っ張って、こちらへと引き寄せて、触れるだけのキスをした。
本当は舌突っ込んで、ぐちゃぐちゃに溶かしてやりたいけど、子供の目もあるから、今は自重しといてやるよ。
「…私が一番好きなのは、おそ松くんだけだよ?」
「じゃあ、もう猫飼うのやめよ。」
「それはやだ。」
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