みんなしてさ、僕のことドライモンスターだと煽ってきて、酷すぎだよねー。僕だって人の心というもの、良心を持ち合わせてるっつーの。

でも、確かに僕が自分の身を挺して、誰かを助けようと思ったのはもしかしたら、これが初めてかもしれない。





「……お前さぁ、なまえに対して執着しすぎじゃない?なに、もしかして、あいつのこと好きなの?」

それは以前、おそ松兄さんがチョロ松兄さんに対して投げかけた言葉。あの時のおそ松兄さんといえば、独占欲丸出しだった。確信を持ったのはそれだけど、実はもっと前から僕はなまえとおそ松兄さんの仲を疑っていたわけで、二人はやたら仲よかったし、でも、嫌悪感は全くなかった。

だって、そもそも血の繋がりはないのだし、純粋にお互い想い合ってる恋愛に、いいも悪いもないでしょ。なんで僕らにとやかく言う権利があるの?




「トド松おかえり。おそ松兄さんがなまえのこと連れ去った。だからさ、カラ松兄さんと一緒に探しに行ってきてよ。」

「は?なにそれ?…僕疲れてるんだけど、自分で行けばいいじゃん…」

「いいから行け!」


バイトからの帰宅早々、熱り立ったチョロ松兄さんに命令されて、仕方なくもう一度外に出た。ぎらぎらのズボンを履いたイタい兄とともに、おそ松兄さんを探すために。というか、デートでもないのになんでそういうの履いてくるかな?イッタイねぇほんと。


「トド松は隣町の方を、俺は赤塚町周辺を探す。全く…裏切りブラザーには刑罰を与えないとな。」

「はぁ、」

呆れで、思わずため息がこぼれた。
その必死さ、もっと他のとこで使えないの?
僕としては、チョロ松兄さんやカラ松兄さんの堅物さのが理解できないんですけど。あれ、あれなの、リア充への僻みなの?

約束がなに?所詮クズ同士の口約束じゃん。
なんで許せないの?母さんがなに?だって、母さんの件はもうずいぶん前のことでしょう?父さんがなにしたっていうの?というか、証拠もない母さんの被害妄想に振り回されるのは、もう御免だし。




だから、僕はおそ松兄さんの味方になることを決めた。



「とりあえず、騒ぎで家にだれもいないから着替え類もってきたよ。それから、少ないけど食べ物もも。」

「……ありがとう、トド松くん。一松くん。」

「どういたしまして。」


なまえといえば、ここにきてからやたら口数が少ない。それもそうか…彼女の立場からしたら、この世紀最大の兄弟喧嘩の火種となってまったことの罪悪感でいっぱいいっぱいなんだろうなぁ。
別に僕らの喧嘩なんて、たかだか中身のないクズの言い合いにすぎないのに。
気にしないでと言ったところで、さらに気落ちさせてしまうだろうから、あえてフォローはしない。

この子は昔からどちらかというと抱え込むタイプだから、心配になる。それは横にいる赤いパーカーも同じだろうけど。


「おそ松兄さん、」

「なんだよ…」

「なまえのこと泣かしたら承知しないからね。」

「わかってるって!」


バカでクソでクズな無責任な僕らの長男だけど、実はいつもみんなのこと考えてくれるおそ松兄さんが、優しいおそ松兄さんが、どうしてもなまえのこと手放したくないっていうなら、その気持ちはきっと本物だから。




「さて、一松兄さん帰ろうっ!クソ兄たちをボコボコにしにいこ!」

「あいあいさー」



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