俺のカノジョは、俺にベタ惚れしている。でも、俺のなににそんなに惚れ込んでくれてるのだろうか。

まあ、俺ってば、ゆくゆくは人間国宝で、カリスマレジェンドな男になるわけだし?なまえはそんな無限の可能性を秘めた俺の魅力に惹かれちゃったんだろうなぁなんてのは半分冗談で、想われてる理由は見当が付かない。

まー別になんでもいいんだけどさ、俺もあいつのこと好きだから。
でもっさ〜まさか妹にここまでゾッコンになっちゃうとは、流石に予想できなかったよね。俺ってば実はロリコン!?いやいや、2歳しか違わないし。10代と20代の恋愛って聞くと、確かに犯罪臭も漂ってくるよな。

てかさ、なまえはいちいち可愛いんだよな。なにあの子、すぐに照れるし、かと思えば大好きってやたら言ってくるし。特にあれよ、あれの最中のなまえは最高に可愛い。









……俺が15歳の時になまえはうちにやってきた。なまえはよく笑う子だ。俺のくっだらない話にも、チョロ松のライジングな話も、カラ松のイッタイ話にも、嫌な顔せず、にこにこしながら聞いてくれる。ただ、両親を亡くした痛みは、その裏に隠し続けてんだろうなぁって思ったら、もちろん放っておくことなんてできなかった。

それは他の兄弟も同じだったと思う。

たぶんうちにやってきて、一ヶ月経った頃だったかなぁ。なまえが19時を過ぎても帰って来なかった日がある。女の子だし誘拐とかありえない話じゃないし、普通に心配だし、みんなで手分けして探し回った。

そんで、彼女を見つけたのは、この俺。

隣町の公園のブランコに座り込んで動こうとしないなまえは、思い詰めてるようだった。



「…やっと、見つけた!…まったく、心配かけんなよな。」

「ごめんなさい。」


俯く彼女はなに一つ悪くなんてない。むしろ、泣き顔ひとつ見せずに、俺たちに溶け込もうするなまえを褒めてあげたいくらいだったし。

しゃがんで、覗き込むように彼女と目線を合わせる。自然と俺の手は、子供をあやすようになまえの頭を撫でてた。




「…お前はいい子だね。でもさ、無理はするんじゃない。だって、お兄ちゃんがついてるんだからさ、だから、泣きたい時は泣けばいいよ。」


今、目の前の女の子は確かに俺の妹なんだ。あーそういや、松代も松造にも女の子には優しくってしつこいくらい教え込まれたなぁ。うん、その通りだと思った。だから、俺がこの子を守ってあげなきゃいけない。


ぼろぼろ溢れるみたいに涙を流すなまえのことをそのまま包むように抱きしめてあげた。









「…私ね、あの時からおそ兄のこと大好きなんだよ!」



いつものように頬を赤らめて、嬉しそうに、それからまっすぐにその言葉を俺に向けた。純真無垢ってきっと、こういう子のこと言うんだよねぇ。まあ、なまえの純潔とやらは俺が頂いちゃいましたけど。


「俺もすっげー好き。」


ダブルベットに横たわる俺らは抱きしめあい、ぴったりとくっついた。

無邪気ななまえを見ていると忘れそうになるけど、これは普通の恋愛じゃない。だから、埋めあわせるみたいに、近くまで詰め寄る。できれば、このままなまえと一つになってしまえたら、楽なのになぁ。そんなの物理的に無理な話だけど。


時折考えてしまうのは、この恋が終わる時。なまえが俺から離れてしまう時。いつか来てしまうのではないかと考えて、そっと胸の奥に閉まった。


薄暗い紫色のライトはなまえには似つかわしくない。つーか、ラブホって高いよなぁ。一回5000円近くって、ぼったくりレベル!今月金欠だけど、目の前の女の子は大層嬉しそうだから、よしとするしかないか。

「ずっと、おそ兄のそばに居るからね。」

「ん、俺も離してなんかやらないし。」






家族にばれないようにすること、隠し通すこと
写真はとらないこと、証拠は残さないこと、
家の中ではお前は妹で、俺はお兄ちゃんだから、俺のこと、お兄ちゃんって呼ぶこと

それでも、俺と恋愛をしたいと望んだ彼女を、俺はいつか不幸にしてしまうだろうか






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