今日は松野家に招かれている日。最寄駅に13時に集合のはずなんだけども、スマホに表示される時間はもうすぐ14時だ。今までは遅くても15分くらいの遅刻だったのに、なかなか来ないおそ松くんにさすがに心配になる。

きょろきょろと見渡していると、人ごみに紛れる彼の後ろ姿を見つけた。なぜか商店街の方へと向かっているのは間違えなくおそ松くんだ。待ち焦がれてた姿を見つけた私は、すぐさま彼の元へ駆け寄った。
「……おそ松くん!」と、彼を呼ぶ声はわりかし大きめで、通り過ぎる人々の目線が注がれるけど気にしない。
それよりも、おそ松くんは連絡手段であるスマホを持たないからこそ、着てくれたことにほっと安堵してる。

……今日くらいはちゃんと叱ろうかななんて隅で考えていると、珍しくライダースのジャケット着てるおそ松くんはサングラスを外した…?え、サングラス?


「なんだい、カラ松ガールズ…じゃないのか、おそ松の知り合いか?」

「あ、えっと、おそ松くんじゃ、ないですか?」


彼の反応に戸惑いを隠せない。すぐに彼は噂の6つ子の兄弟なのだろうと理解はしたけど、頭はまだ混乱したまま。間違われることにも慣れているのか「……俺は次男のカラ松だ。」と、聞かずとも自己紹介をしてくれた。これで彼の兄弟に遭遇するのは2人目だ。


「私は、おそ松くんとお付き合いしているみょうじなまえです…」

手短に事情を説明すると、困っていた私に「案内してやるよ。」とカラ松くんはきらきらした瞳で一言。目の色はおそ松くんと違い茶色だった、というか、カラコンかな…?今時、男の人でもカラコンするのが主流なのかもしれない。

昔は喧嘩ばかりしていただとか、おそ松くんの幼い頃の話を聞きながら、向かっている途中で、以前少し話をしたことのあるチョロ松くんとも合流した。重そうな紙袋を手にして、ふたりの会話から察するにどうやらイベント帰りみたい。


「…本当にごめんね〜全く、おそ松兄さん何してるんだろうね?」

「すごく心配です…。」

「いや、あの人なにがあっても死ななそうだから平気だよ。」

チョロ松くんの言いたいことはなんとなくわかる気がする。どんな境遇に立たされても、おそ松くんは「なんとかなるって!」って笑顔で乗り切る姿が目に浮かぶんで、「そんな彼が私はとても好きなの。」と心の声をぽろりと零してしまって、1人照れくさくなった。

角を曲がって、もう数十メートル歩けば到着するそうで、その前にまた同じ顔に出会った。向こうから歩いてきた紫色のパーカーの彼が興味なさそうに、だけど、私のことをじっと見つめる。


「あ、クソ松と、チョロ松兄さんと、誰……?」

「おそ松兄さんの彼女なんだって!」

「へー、つーか彼女とかいたんだねー」

3人目は、四男の一松くん。おそ松くんからは猫の友達がいると聞いていた。チョロ松くんが私の代わりに説明をしてくれて、私は簡単な挨拶を済ますだけ。

3人の姿を交互に見る。それから、おそ松くんの姿を思い浮かべる。かろうじて、服装で見分けてるもの、全員同じ格好をされたら、私はだれが誰なのか判断できない気がする…。


「おそ松兄さん、たぶん家にいた。気がする…」

「なにも言ってなかったよね。」

「こんなかわいいガールフレンドを待たせるなんて、罪な男だな。」


もう、15時になる。さて、おそ松くんはどこにいるんだろうな?