今日はおそ松くんとデートの日!月に2回の感覚でお出かけはするようにしてる。もう何度目だろうか、この前はアイドルのライブに連れて行かれた、その前はショッピングの後の素敵なバー、そして、今日は動物園!


「…なまえちゃん〜!待った?」

「遅刻だよー!」って私が頬を膨らませても、「ごめんね〜!」って悪びれた様子もなく謝る彼の姿も定番だ。時間にルーズなところも彼らしいといえばらしい。たまには叱るべきなのだろうけど、私はおそ松くんにとことん甘い。その笑顔を見てると、なんでも許したくなっちゃうのだ。

「それじゃ行こうっ!」って、自然に繋がれた右手が熱くなる。指を絡めるように恋人繋ぎもデートには必ずついてくるもの。


「ねえ、ねえ、あそこ入ろうかっ!」

まず、私たちは触れ合いコーナーと題された部屋に入ることにした。中には猫や犬たちが待っていて、それぞれのコーナーで一緒に遊ぶことができるみたい。すかさず猫の元へ駆け寄るおそ松くんの後を私も着いて行く。
その背中を見ていると、ぐいぐい引っ張ってくれるところに、長男なんだな〜なんて実感する。


「かわいいな〜こいつ!」

「おそ松くんって、猫好きなの?」

「ん、まーね!」

グレーの毛並みの綺麗なその子は、おそ松くんに随分懐いたようで、彼にすり寄ってる。歯を見せて、いつものように笑う彼につられて、私もその口元が緩んだ。彼のその無邪気な笑顔は、きっといろんな人を幸せにしてくれる。私だけが独占してていいのかなぁなんてたまに思ってしまうくらい。

「うちの近所さ、野良猫多いんだよね〜四男の一松の友達なんだけどさ!」

「そうなんだ!」

おそ松くんは兄弟の話をするとき、本当に幸せそうな顔して話すから、私もいつか6つ子全員に会いたいな。そんな私の心中を察したのか、「…今度、うち来ない?」って誘われて、私は有頂天になった。以心伝心ってやつなのかな、これは!

私とおそ松くんのことを見上げる猫ちゃんの視線が突き刺さる。私たちは目と目を合わせて、引き寄せられるみたいに、そのまま、そっとキスをした。


「…なまえちゃん、」

「なーに?」

「なんでもなーい!ただ、呼びたくなっただけ!」

彼に呼ばれると、自分の名前すら愛おしくなる。私だって、無性におそ松くんの名前を呼びたくなる時あるよ。これからも、たくさんたくさん、呼んであげるんだから。

猫ちゃんにバイバイした後は、いろんな動物を見て回った。

おそ松くんに会う度に、宝物が増えていく。それは形に残るものじゃなくても、一生私の中で消えずに輝いてるんだろうな。


「またね、なまえちゃんっ!」



いつも通りの笑顔をくれたあなたが、偽物だったなんて、私はまだ気づいていなかった。