「ちょっと、おそ松兄さん!?なにしてるのっ!?」
なまえちゃんと俺の距離が離れる。それはチョロ松が俺たちを引き剥がしたからだ。
離れたくなかった。でも、離れてなかったらとんでもないことになってた気もする。
チッて舌打ちをつきたくなるけども、どう考えても今は俺が悪い。
「ほんと、見境ないよねっ?!一松の彼女に手を出すのはアウトだよっ?!」
「…俺にもいろいろあるんだよーだからっごめんって」
ごめんねって、なまえちゃんにも軽い感じで謝る。おまけで俺のウィンクでもつけとこっか?そう思ったけど、真っ赤な彼女の顔を見て、俺までつられてしまいそうになった。
なんちゅー顔してるの、なまえちゃん。可愛すぎだから、拐いたくなっちゃうから。君のことお姫様抱っこして、このままどっかいっちゃいたい気分。一松のそばから引き離してやりたい。
「…あのさー俺ともちゃんとデートしてね、だって、約束してたじゃんー!」
「いやいや、それもダメだから!残念だけど、おそ松兄さんと十四松はできないよ!?僕はライブデートしたけどね!」
あーもーさーチョロ松、ちょっと黙っててくんないかなー。二人で会う時間作らなきゃ、なにも始まらないじゃん。俺がどれだけ彼女のこと好きで大切にしているかってこと、ちゃんと伝えたい。嘘ついてごめんねって謝りたい。言葉にさえすれば、きっと、君は笑って許してくれるんじゃないかと思う。甘いかな?でも、なんとなくわかるんだよ。きっとそうなるって。
君を騙したこと、俺、今死ぬほど後悔してんの。俺のそばにいてほしいの。
でも、普通に考えたら彼氏の兄貴とデートするなんて、ありえないことだ。
「……いいよ。私もおそ松くんと、二人で出掛けたい。」
「ええっ!??いいの!?おそ松兄さん、本当にクソ野郎だから、気をつけてね!??」
チョロ松うるさい。まるで浮気現場に遭遇してしまった…みたいな顔してやがる。むかつく。つーか俺が本物だっつーの!
でも、イライラがかき消されたのは、ニコって笑う彼女の姿を目にしたから。好きだよ。大好きだよ。できることなら、今からでもデートしたいし。
がっつきすぎてもだめだし、しょうがないから今日はここまでにしよう。遠かった君との距離が少し近づいた。それだけで、俺はにやけてしまいそうだった。
「それじゃ、来週の日曜ね!」
「うん!」
絶対に、絶対に今度こそ、俺は君を泣かせない。悲しませない。
君の恋人の松野おそ松として、君の隣にいたいから。あの日々の続きをしよう?
俺は最高潮に浮かれていた。
いつも浮かれてるけどさ、だから、母さんの手伝いとかしちゃって、
ちょうど、みりんが切れたからってことで、この長男さまが直々にお使いにいくことになった。
浮かれてるって、怖い。
周りが見えなくて、俺が最後に目にしたのは、こちらにむかってくる一台のトラックだった。