出会ったのは、たまたま気まぐれで行った駅前。特にやることがなくて、たまには電車で知らない土地でもいこうかなーなんてほんと適当に降りた駅がなまえちゃんの住むところだった。

ナンパはしたことあるけど、成功したことは今までも一回もなかった。それでもなまえちゃんに声をかけたのはなんでなのか覚えてない。いや、ほんとにさ、なんか勝手に声かけてたんだよ、自分でも意味わからなかったんだよ。


「……あ、あのさ、なんていうか、えっと、その、暇なら飲みに行かない?いや、その可愛いなっておもって、あれだよ一目惚れってやつ?
その、嫌じゃなければ、どうですか?」


「え、」

君は困ったように苦笑いをした。それが最初。
確かに可愛いなと思ったことは間違えないし、なまえちゃんは俺の好みドンピシャだった。でも、それだとAV女優にもいっぱいいるし、俺のラインって浅いから当てはまる女の子は多かったりするんだよね。


「なんか、ごめんね!変なこと言ってごめん!それじゃ!」


「あ、待って!」


逃げようとする俺はまさか引き止められるとは思わなくて、目を見開いたまま、再び彼女の方を向いた。あれ、もしかしてこれはナンパ成功した感じ?まじで!?こんな可愛い子と飲みに行けるの!??



「……ぜひ、ご一緒したいです!」


微笑む君を目の前にして、よっしゃーーー!と心の中で大きくガッツポーズをした。


「俺は松野おそ松。君の名前なんて言うの?」

「私はみょうじなまえ」

俺って最低だけどもこの時はまだどうやってラブホに連れ込もうかそればっかり考えてたっけ。だって、男の子だもん!しょうがないでしょ!

まあ結果は…俺にお持ち帰りする勇気があるわけもなく、飲み屋で話し込んで終電前にばいばいしただけ。
それから、デートをすることになって、会うことになって、付き合うことになって、当たり前のように自然と進んでいった。


オカルトとかよくわかんないけどさー今思えば、ソウルメイトって奴なのかなー?
なんか引き寄せられたんだよね。俺となまえちゃん。


だから、君のこと騙したこと、後悔してるよ。












「……ということで、僕がおそ松兄さんのふりしてたんだ。ごめん…みんな。」

「は?」


いやいや、待って、なにしてんの一松意味わからないんだけど。彼女の恋人は俺だから!って言い出したいのに、なぜだか、負けた気がしてしまう。


一松の横にいるなまえちゃんはなんだから浮かない顔していて、もしかして気がついてくれてるのだろうか。

俺はなまえちゃんの口から一松は偽物で、俺が本物だと聞きたい。

6つの顔に見つめられる彼女に、ただ、一人、俺だけを見つけて欲しかった。
ほんとうに、ほんとうにただ、それだけなんだよ。それは、本物。俺のなまえちゃんへの愛情は本物だから。