▼ 6回目
これはたまたま作りすぎちゃっただけで、別に一松くんのためとかそんなんじゃなくて、あまり料理のできない私が唯一つくれるものといえば、カレーくらいで、カレーって一人分だけ作るのってむりじゃない?!だから、食べるの手伝ってくれるならば助かっちゃうなーって本当にそれだけ。
あとは、この前、なんだかんだ看病?してもらったから、そのお礼も兼ねて。
ぜーったいにぜったい口には出さないけどね!!なんせやつは、ストーカーなんだから、犯罪者なんだから。
「……え、なにこれ、」
「みればわかるでしょ。」
「僕の?」
「そうだよ。」
私が家に帰ってくるのはだいたい19時。でも今日は半日出勤だから夕飯の準備も楽々できてしまった。
テーブルに用意されてる二人分のカレーを見つめて、一松くんは無言のまま突っ立ったている。
…あれ、大喜びするとみていたのに、彼の反応は薄くて、思っていたのと全く違った。
「……僕帰る。だって、なまえの手料理ってレア。永久保存しとかなきゃ、タッパー持ってこなきゃ。どうしよう、今日は雪が降るかもしれない。いや、雹かもしれない。」
「ねえ、ちょっとそれは失礼じゃない?」
玄関へと向かおうとする彼の、紫のフードをつかんで引き止める。こらこら、どこにいくのかな?私の手料理は不味くて食えないと?
いいから席につけっ!と、一松くんを無理やり座らせた。
「…いただきます。」
恐る恐る、スプーンにのったカレーを口へと運ぶ。味はちゃんとみたし、というか、カレーくらい市販のルー使えば誰だって作れるし!なめてんのか!
一松くんの口にもあったようで、美味しいと一言ぼそりと呟いて、彼はきらきらした目で、お皿の中のものをどんどん消化していった。
「今、僕の中になまえの愛情が流れ込んでいったわけで、そのまま僕の一部になるんだ。これ以上の幸せはないと思うんだけど、でも、僕はなまえのことも食べたい。」
「気色悪いこといってないで、おかわりいる?」
「…いる。」
今日の一松くんは珍しく、いつもよりおとなしい。こうやって、黙ってればいいのにな。
なんだかんだ纏わり付かれるようになって1ヶ月。最初は本気で悩んでた。毎日毎日ストーキングされて、おそ松くんに相談したところであいつ面白がってるだけだし。
でも、慣れとは恐ろしいもので、いつの間にか仕事から帰ってきて、一松くんと過ごすのが当たり前になってしまった。
ストーカーに寛大すぎるだろ、私。でも、一松くんに対しては特に嫌悪感みたいなものはない。きっと、他の人間だったら、即効通報してただろうな。
「……こうしてると、新婚みたいだね。」
「そのお口にガムテープ貼ってあげようか?」
いつまで続くのやら、この関係。