※だーく、死ねたあり クリスマスは嫌いだった。リア充をみてるとぶち壊したくてたまらなくなる。きっと自分に持っていないものを、手にして輝いてる人が羨ましかったのだろう。 人の幸せなんて、どうせ不幸せになる前の一時の錯覚なのだ。傷つくのならば、裏切られるのならば、そんなもの最初から必要ない。一人は楽。なにも恐れるものはないから、一人の世界に浸って、篭って、そして、いずれ、死期が訪れる。ただ、十字架を背負うだけの、なにも残らない人生をきっと俺は過ごしていくのだろう。 辺りを覆い尽くす真っ赤な炎に、サイレンの音が未だ耳に残る。あの日から時間が止まってしまったようで、暗い暗い20代の俺の中に、突然飛び込んできたのが、無鉄砲な君。 君は俺を真面目な人と呼ぶ。それから繊細な人だと。人のことばかり考えて、自己犠牲をする人だと。自分のことを大切にしない人だと、君は言う。 「だからね、私が一松のこと、代わりに大切にしてあげるの。」 「余計な御世話だし、」 「勝手にやってるから、ほっといていいよ。」 君は君というものを持っている人で、まず立っている舞台が俺とは違って、わざわざ底辺に落ちてくる君のことは理解できない。 無防備に俺の部屋に足を踏みれた君はただの馬鹿でしょ? 「…そういうの、苛々する。」 「い、一松?」 無理やり腕を掴んで、引き摺って、君をベットに放り投げる。あーネクタイでもあれば完璧だったが、あいにく俺の私服はパーカーがほとんどだ。馬乗りになれば、君はもう動けないね。男と女の力の差に絶望する? そうそう、そうやって自信に溢れる人間の恐怖に満ちていく表情に高揚する。 どんな風に泣かせようかな?鳴かせるっていった方が正しい? 「……一松にはできないよ。」 「黙れ。」 その細い首に手をかける。ギリギリと締め付ければ、君は息苦しそうに目を細める。助けてと乞うて、俺の側には2度と寄ってこない。きっと、そうだ。 そしたら、俺はまた完璧な闇を手に入れられる。光は怖い。そんなものいらない。それならば太陽は消してしまおう。 徐々に力の抜けていく君は、死へと追いやられる。それは俺の住む世界にとてもとても近いところ。息苦しくて、まるで深海のような世界。 殺した後は、そうだな、何回も腰振って、射精して、セックスを繰り返して、君の冷たい身体を感じて、ああ、それだけで興奮する変態な俺。 でも、君を失ってしまえば、俺は死ぬほど後悔して、きっと君の後を追うことだろう。 どうやって死ぬの?首吊り?飛び込み?睡眠薬?死ぬのなんて、簡単で、その瞬間この思考は役割を果たさなく。役割ってそもそもなに? 「けほっ、」 「ねえ、」 「けほ、けほ、」 「なんで、抵抗しないの。」 「だって、」 「死ぬよ?」 「だって、一松が好きだから、だから、私が救ってあげたいの!」 「は?」 ばかなの?俺のこと救ってどうするの?正義感?自惚れんなよ、そういうの自己陶酔って言うんじゃないの?恋だとか愛だとか、人間の欲を綺麗に模っただけの、中身のすっからかんの置物にすぎない。くそみたいなもの無理やり押し付けないで欲しい。一度堕ちた人間に、道なんて用意されてないんだよ。俺に帰るところなんてどこにもないんだよ。 俺はいつから壊れてしまったんだろう。 兄弟を失ったあの日から?それとも、もっと前から?なんで、俺だけここにいるの?どうせなら連れて行って欲しかった。父さんも母さんも、兄さんたちも弟たちも、どうして、このゴミクズの俺だけ、残して逝ったわけ? 「一松は、ここにちゃんといるから。」 「うるさい、」 「ちゃんと心臓動いてるし、息してるし、感情だってあるよ。生きてるんだよ。だから、自分を追い詰めないで、」 「うるさい、」 「一松、」 かっこ悪い。このタイミングで意図なしに出てくる涙が醜い。悲しい、苦しい、辛い。どの言葉で表せばいいのかわからない。一人が楽だと信じていたけど、本当は一人じゃなかったのは失って気がついた。突然本物の孤独に突き落とされて、世界が一転しすぎて、泣くことすら忘れていた俺は、止める術を知らない赤ん坊のように喚き続けた。 「……私がいるから、」 「あんたは、俺より、先に死なないで、」 「うん、わかったよ。」 同い年の彼女は、母親のように俺のことを抱きしめる。俺は人の温かさを感じられて、情けない言葉で彼女に縋り付く俺は、案外まだ人間でいることを諦めきれないようだった。 生き乞い (世界はまだ、俺のことを見捨てる気はないらしい。) |