最近、大好きなカノジョが構ってくれない。それが、ゴミ青年の悩みです。あの、親友の猫さん、どうすればいいと思いますか? …そう問いかけたところで「にゃぁ」しか返事はないから、僕は大きな溜息が漏れるだけ。 けど、もしも、僕が猫語を喋れたのなら解決法は見つかったのだろうか。 答えはノー。見つからないだろうね。だって、彼女は僕に眼中にないのだから。 「はぁ〜〜司様かっこいい〜!」 彼女の手にはスマートフォン。ガラケーが主流だった高校生の頃は、まさかこんな薄型で、しかも大画面のものが開発されるなんて夢にも思わなかった。だって、こいつがあれば中々ハイクオリティなゲームだってできるし。というか小型ゲーム機とほとんど変わんないし。 ……まあ、それは置いといて。 そう、問題はそのスマホゲームにあるわけで、彼女の目にはさっきから「司様」しか映っていない。 誰だよそいつ、すっごい王子様みたいで、きらきらしてるけど。…浮気かよ。いや、浮気だろう?これ、浮気だよね? 現在進行形で僕は今目の前で浮気されてるんですけど。 現世は、アイドル戦国時代らしい。それは、乙女ゲームとやらにも影響をしていて、ネットでめっちゃ調べまくったけど、育成だとか、レストラン経営するとか、刀の擬人化だとか、リズムゲーとかもろもろこの世には存在している。はあぁ!?なにこれ、顔みんな一緒じゃん? あ、僕が言うべきセリフじゃないって?そんなの知らないし。 あーもう、構って欲しい構って欲しい構って欲しい構って欲しい。構ってほしい! そんな悶々としたオーラと視線を送り続けてはや1時間。試しにかめはめ波も打ってみたけど、効果はなし。 今日もなまえは二次元の写る画面に釘付け。 できれば、今すぐにでも彼女の手からスマホを奪って、それから投げ飛ばして、憎しみを込めて思いっきり踏み潰して、画面バッキバキに割って、再起不能にしてやりたい。ついでに復元できないように、パソコンも壊しておこうか? でも、それをした後の彼女を想像するとやっぱりそんなことできるわけなかった。 「あのさ、」 「なーに?」 「なまえはさ、俺と司様のどっちが好きなの?」 彼女と少しだけ距離をとって、背を向けて体育座りをする。きっと僕ばかりがなまえの事好きで、僕ばかりが悩ましくて、僕ばかりが空回りしてる。 本当の本当は、なまえは僕の事好きじゃないって。そんな、考えすら浮き沈みしてる。 そもそも彼女は高嶺の花だったし。クラスで人気者の可愛い君と、根暗で友達もいない僕が今でも一緒にいることすら、本当はこの世界にはあってはならない事実なのかもしれない。だから、彼女は僕のことを見てくれない。 こちとら真剣に聞いてるのに、ようやくスマホから目を離したなまえはくすくすと笑みをこぼした。 「……一松もヤキモチ焼くんだね。」 「は、別にそんなんじゃないし…!」 「嘘つけ〜」 つんつんと僕の頬をつつくなまえの腕を掴んで、顔を近づけ、そのまま唇を奪う。 今までに僕から迫ったことが一度でもあっただろうか?僕がこんなことする日が来るなんて、自分でも予想してなかったし。どうせザ・草食系男子ですよ。あ?猫は肉食だって?そんな細かいこと気にしないでいいから。 「…俺だけを見てろよ、」 あーあ、僕はなにを言っているんだ。じわじわと顔が熱くなっていった。目線を逸らしてみても、君はわざとらしく覗き込んでくる。やっぱり余裕があるのは君の方ばかりで、僕には微塵も残っちゃいない。 「大好きだよ、一松。」 別に乙女ゲームやるなって言ってるわけじゃないんだよ。そうやって、ちゃんと僕のこと見ててくれるなら、なんでもいいんだよ。 なまえにキスできるのも、抱きしめられるのも、司様にはできないわけで、僕だけの特権なわけで、きっとそれはずっと一生変わらない。 「…俺も、その、好きだから、」 二次元≒現実?僕の存在意義 「あのね、司様がね!ライブやるんだよ!二次元がね、現実にくるんだよ!すごいよね!!司様!早く会いたい!」 「…………。」 やっぱり、いつかスマホぶっこわす。 -------- 私は育成ゲームより、レストラン経営系ゲームに夢中です笑 特別出演きりし●司様 |