おそ松 | ナノ









「ねえねえ、なまえ〜〜なまえちゃんってばぁ〜まだ怒ってんの〜?」


少し離れて、私は湯船に浸かる。目の前の彼氏様が駄々こねても、私はスルーの一択だ。こんなクズ男知らないし。というか、お風呂だって、私が入ってたら勝手に入ってきやがったし、一人になりたいっていう女心なんて、というか、人の気持ちなんて馬鹿にはわかりませんよね!?おそ松くんはテンションだけのガサツ人間って、チョロ松くんの意見に大いに賛成である。


「ひゃぁっ!??」

「へへ、冷たいだろ〜?」


ジャァァと音を立てて、彼の持つシャワーから、冷水が私に向けられる。せっかくまとめておいた髪は濡れしまい、顔にかかって邪魔になった。

その悪戯に、私の顔がますます不機嫌に染まっていくのは、ごく普通のことではないだろか。

あーもうどこの小学生だよ…あ、そうだメンタル小学生6年生のままだっけ!?下半身だけ大人になっちゃった小学生!?

にやにや笑ってるおそ松くんがただただイラつく存在でしかない。

怒鳴ることもなく、なにをしても黙りを貫く私におそ松くんはどうやら痺れを切らしたみたいだった。


「もーさー!許してよ!つーか、そもそも、俺なにもしてなくないっ!?」

「した。浮気した。」

「だーかーらぁ、あれ、あいつらが勝手に言ってるだけだし!」


綺麗なお姉さんを舐めるように盗み見てた、ナンパしてた、AV祭りしてた、風俗に行こうとしてた…ってのは未遂で済んだけども。それは全て彼の弟たちからの情報である。さらに、私も彼がエロ本を堂々と読んでたのを目撃してる。言い逃れはできない。これだけの証言があるのに、こいつは何もしてないと言いきったのだ。
でも、確かに一般的に言う浮気よりは軽罪なのかもしれないけど、私の狭量な人間だからだからしょうがない。そんな私のこと、好きだと、付き合ってほしいと言ったのはそもそもおそ松くんだし。なんだか、私の方ばかりおそ松くんのことを好きみたいで、悔しいじゃないか。




「………なまえって、実はすっげぇヤキモチ焼きだよね〜?そこも可愛いんだけどさっ!」


私はまだ許してない。なのに、後ろから抱きしめられて、にやけそうになるのをぐっと堪える。嬉しくなんかないもん。全然、嬉しくない!

ふにふにと決して豊富でない膨らみを揉み出す彼の手を思いっきり抓った。痛いなぁ〜なんて声が聞こえてきたけど、もちろん無視!この雰囲気でそっちに流そうとする不道徳野郎!この万年発情期野郎め!


私はすごくすごく怒ってるのだ。




「…なまえ、」


力で男の人に敵うはずもなくて、無理やりそちらを向かされ、キスをされた。嫌だと頑なに拒もうと、にゅるりと入ってきた舌に口内は犯される。ぱしゃぱしゃと水面が割れる音と、リップ音が混ざる。

おそ松くんはいつもそうだ。こうやって、誤魔化そうとする。
わかってるのに頭が蕩けそうで仕方ない私もまた彼と似たようなものなのか。ちがう、おそ松くんは、そもそも悪いことなんてしてない。わかってはいるのに許せない自分が嫌になってしまって、こうやって八つ当たりして、私って本当ばかだなぁ。



ああ、ちょっと、逆上せてきちゃったかもしれない。


「はぁ、はあ、」

「あはは、顔真っ赤だよ、なまえ。タコみてぇ〜」


呑気な笑顔を見ていると、なんかもうどうでもよくなっちゃうのは、彼の人柄というものなのか。

ちゅって触れるだけのキスをもう一度して、「俺が悪かったよごめんな」って頭を撫でながら許しを請われたら、もう、何も言えない。
普段はわがままなくせして、こういう時だけ引くのが早いのは彼のお得意技だ。さすがは6つ子の長男と言うべきなのか。人を懐柔してしまう彼の技に、私はどんどん溺れていく気がしてならない。
そこは、やっぱり、ちょっとだけ悔しいかも。

彼に抱きつけば、素肌のままで身体はぴったりとくっつた。おそ松くんに触れるのが好き。たまには素直に彼に引っ付いてみるのもありなのかな。


「お、珍しく甘えただね、」

「好き、」

「ん、俺もなまえのことだけが本当に本気で好きだから。」


無職、ヘビースモーカー、酒飲みで、ギャンブル好きで、女の人に目がない、だめな男だってわかってるのに、どんなに短所が見えたところで私は彼のこと嫌いになれないの。

全部全部まとめて、松野おそ松が好きだから。

痘痕も靨


「ねえ、なまえ、このままセックスしよっかぁ〜もう俺のチンコ限界なんだけど、」

「ばか!」