※アニメ24話ネタバレ 俺ってなんでもできちゃう長男様じゃん?でも、それって6つの顔が揃って初めて発揮されるもので、俺自身は本当は中身の空っぽなどうしようもない正真正銘のクズなんだよね。それは6つの顔がバラバラになったときに証明されてしまって、なにも持たない俺は生きていく意味も、もはや価値もないのかもしれない。 一松が自分のことを燃えないゴミだと比喩するけど、それを借りるなら俺は無能な粗大ゴミ同然なのだろう。 1人で食べるご飯はクソまずい。母さんの料理は変わっていないはずなのに、会話のない部屋で、もくもくと食べる料理は味がないように思えた。 チョロ松、トド松、カラ松、十四松、あの引きこもりの一松まで、1人ずつこの家を出て行った。長男である俺だけがなにもできない無能って、世間様からみれば、こんな恥ずかしい話はないのかもしれない。 ねえ、長男ってなんなの?何でもかんでも長男なんだから、しっかりしなさいって両親はもちろん、学校の先生だって、大人はみんなそう言ってたんだ。 ねえ、長男は誰に甘えればいいの?いや、甘ったれていたから、こんなクズが出来上がってしまったのか。 でも、違う。親の金で生きるニートという点では甘えていたけども、そうじゃなくて心の話。いつだって、お調子者を演じてきたこの心の闇は誰に預ければいいのだろうか。虚勢を張っていたこの心は誰が許してくれるだろうか。 「……おそ松くん?」 「あ、ごめん。」 隣に彼女がいることをすっかり忘れていた。射精をした後はなにかと思い耽ってしまうのは、昔からのくせ。 ぷかぷかと浮かぶ煙草の煙のように、俺はこのまま消えたほうがいいのだろうか。 「俺、このまま、消えちゃおうかな。」 「どこか行っちゃうの?」 「うーん、どうしよっかな。」 「行かないでよ。」 そう言って、君は俺の手首を掴む。なまえちゃんとは別に恋人じゃないのにラブホに来て、セックスしちゃうあたり、俺って男としてもクズだな。女の敵だよね。本当、俺ってなに一ついいところないじゃん。そういえば、童貞ってのもなんか俺たち兄弟の固い絆みたいなもんだったな。まあ、俺、とっくの昔に卒業してるけど。 ぐりぐりと銀色の灰皿に持っていたものを押しつけて、それから俺は君の唇を塞いだ。苦い味がするって、君は笑う。うん、そりゃ、するでしょうよ。 「ねえ、なまえちゃんは、俺のこと好き?」 「うん、」 頬を赤く染めてこくりこくりと頷く君に、俺はなにも感じない。所詮、寂しさを埋めるための道具としか思っていないから。俺からしたら、体の相性がいいちょうど良い穴だよなんて言ったら、なまえちゃんまで離れて行っちゃうかな?そしたら、俺は完璧に一人ぼっちになっちゃう。それは、嫌だな。 「…私のところに来てくれればいいのに。」 「んー気が向いたらね。」 ひどい言いようはするくせに、離れないでほしい。わがままだよな、俺。なぜか居心地がいいのは、それは君が俺のこと好いていると確証があるからで。でも、それもいつまで続くのかわからない不安定なもので、兄弟が変わってしまったように、人の気持ちとやらは簡単に変化する。特に恋愛感情は。 そんなものに俺自身を預けられわけない。当たり前のことだろう? 「私、おそ松くんのことなら全部受け止めるよ。」 だけど、君はあまりにも真っ直ぐに俺のこと見つめてくるから、じわりじわり、侵食してくるみたいで少し恐ろしい。その瞳に全て見透かされていそうで、気がついたら心を丸裸にされてしまいそうで。 それが、怖くて、たぶん、俺は誰にも心を開けないのかもしれない。 「……君に俺のこと、支えられる?」 「うん!支えてみせる!」 本当に?俺、相当めんどくさいよ?構ってちゃんだよ?連絡とれないと発狂するかもよ?他の男と喋ってるだけで嫉妬するかもよ?もしかしたら、手出しちゃうかもよ?お金巻き上げるかもよ?レイプまがいなことしちゃうかもよ? 大事にできないかもよ?クソ男だよ? 人間としてのクズを、君は受け入れられるわけ? 「だって、それ全部含めて、おそ松くんでしょ?」 返ってきた言葉があまりにも、シンプルで逆に頭の中で処理がうまくできなかったけど、その代わりに俺は彼女のこと抱きしめてた。 愛情依存症 好きとかよくわからないけど、今の俺は、彼女に縋るしかなかった。かっこ悪いけど、だって、これが俺だから。 松野おそ松って、そういう人間なんだよ。 |