空を見上げれは沢山の星がはっきりと見えた。 きっと明日は晴れ空が広がるのだろう。新年早々、気分良く一日が過ごせるに越したことはない。 元旦から3日間連休を取るために大晦日はギリギリまで仕事を詰め込んでいた。いい大人になっても年明けにはこだわりがあるの。どうしても好きな人と過ごしたいけども間に合わないかもしれないという焦りの中、征十郎との待ち合わせ場所に向かったのが23時。 「征十郎!遅くなってごめんねっ!」 「気にしなくていいよ。お疲れ様。」 息を切らして走ってきた私に、着物を身に纏っている彼は微笑んで、それだけで背負っていた疲労なんて消えてしまうの。 「ほら、早く行こう。」 「うん!」 繋いだ征十郎の手は離してしまいそうなほど冷たくて、氷のようだった。冷え症の彼を長時間待たせてしまったことに罪悪感を感じていると、「待ちきれなくて早く来すぎてしまったんだ。」と征十郎らしくないことを言ってくれた。 せめて私の体温を分けてあげたくて、先ほどよりも強く彼の手を握る。 「……除夜の鐘、聞こえるね!」 「そうだね。」 遠くから聞こえてくる鈍い音に耳を済ませる。今年ももうすぐ終わるのだと実感させられる。初詣のために近場の神社へ向かう途中、出会ってから今までの想い出を振り返って見た。 大人になるまでに沢山のことがあった。一人の人と向き合うのだから、上手くいかない事の方が多くて、何度も手放しそうになって…今だってそうだ。征十郎は何処までも進んでいける人で、将来のことを何も考えずにただ毎日を過ごしてるだけの私とは違う。 「征十郎と年越せることが、すごく嬉しいの。」 「去年もしたじゃないか。」 「毎年ね、夢みたいなの。」 この人と恋人でいられるだけでも、どれほどの幸せをもらっているのか計り知れない。 だから今年も神様には「この先も征十郎のそばに居られますように」とお願いする。お賽銭、いくら使おうかな。500円?それとも1000円? 「………」 征十郎は立ち止まって、手を繋いでるから私も遅れて足を止める。「どうしたの?」と彼の方へ顔を向ければ、次の瞬間、私の視界は彼の着物の色で埋まった。 道端で抱き合う私たちに、同じように神社に向かう人たちから視線が注がれる。彼は全く気にしていないけど。 征十郎は腕時計の針を確認して、「年明けたよ。」とそれだけ言って、私を抱きしめる力を強めた。 明けましておめでとう。も、今年もよろしくね。も、言わせてくれない。 「黙って聞いて。」 「…?」 はぁ、と深呼吸する彼の声が聞こえる。とくんとくんと彼の鼓動の速さがわかる。 「なまえの今年の願い、僕が全て叶えてあげるよ。」 「ほんと?」 「ああ。………だから結婚しよう。」 余りにも自然に、さらりとプロポーズをされたものだから、一瞬なにを言われたのか理解できなくて、驚きで目を丸くして彼を見上げれば、ふわりと征十郎は微笑んで見せた。 神頼みは不要です! (あなたの存在があれば、私は何もいらないの。) 「ど、どうして、このタイミング?!」 「すまない、我慢できなかった。早くなまえと一緒になりたくて。……で、返事は?」 「も、もちろん、オッケーです!」 断るなんて選択しないの。 今年始まって数分しか経っていないのに、これ以上に嬉し泣きしてしまうこと他にないよ。 「……愛してるよ。」 寒空の下で、私たちは唇を重ねた。 ---------- 安定の元旦短編遅刻です!(^ω^) 初詣に行くお話を書いてたんですが、長すぎたのでだいぶカットしました。 |