⇔赤司←主人公←虹村 「……オメーと赤司は釣り合わねぇよ。」 「わかってますよ、でも!」 帝光中学は有名な私立高で、勉学、スポーツ、さまざまな活動に力を入れている名門校だ。 だからといって、誰もが有能であるわけではない。私のような凡人もいるわけで…部活動が強制であるこの学校で私が選んだのはバスケ部のマネージャーというものだった。 選んだ理由?……そんなの友達が一緒にやろうよ!って言ってきたから決まっている。 私はいつも誰かに流されて生きている。でも、それが楽だから、私はなにも不満は感じてないの。 「俺が持つよ。」 「ありがとう、赤司君。」 他校の資料の入った段ボールを運んでいたら、軽々と赤司君はそれを取り上げて、「どこへ持って行けばいい?」と微笑んだ。 「あ、えっと、資料室!」 天才のレギュラー陣はどこか近寄り難いイメージがあったけど、赤司君だけは違ったの。主将になる前も、なった後も、彼は変わらず優しい。 私の中で、彼は絵本に出てくるような王子様。 そんな王子様に出会って、恋に落ちない訳がない。 私は、密かに赤司君のことを想ってる。 「……まーた、イチャイチャしてんのかオメーら。」 「虹村先輩!」 「違いますよ、虹村さん。」と軽く流す赤司君の言葉に、私は勝手に傷ついて落ち込む。 彼の言うとおりなのだけど、好きな人に拒否されるのは誰でもショックを受けるものだと思う。 「これ、ここでいい?」 「うん、平気!」 「それじゃ、片付け頼んだよ。虹村さん、俺は先に戻っていますね。」 「おうよ。」 段ボールを机の上に置いて、すぐに赤司君は練習へと戻ってしまった。 せっかくの赤司君と二人きりの時間も虹村先輩のせいで邪魔されてしまったし……思い返してみればこれが初めてではない。 前回もこうして、虹村先輩が間に入ってきたような…。 「……虹村先輩は練習戻らないんですか?」 「あぁ?あー俺はまだここにいるわ。」 バスケ部専用の資料室で、今回の大会で必要だったDVDをあるべき場所へと片付けていく。虹村先輩は椅子に座って、頬杖付きつつ私のことをガン見してくるけど、気にしない。 「なあ、」 「なんですか?」 「俺の前でまで強がってんなよ。」 「な、なんのことですか?」 ぎくり、肩が揺れる。出てきた言葉も動揺が含まれてるのは明らかだった。誰にも気づかれないように、平常心を保っていたのに。さすがは元主将。人のことをよく見ている。 「赤司さー彼女できたんだとよ。」 「………」 「泣かねーの?」 「……」 「みたけどよー彼女かわいいかったぜ。」 「……」 虹村先輩には背を向けて、私は棚の前で黙々と作業を続ける。黙り込んで、聞こえてないフリをする。 がたんと椅子の引く音が聞こえて、足音がこちらへ近づいてきた。 振り向かなくてもわかる。虹村先輩は今、私の真後ろにいる。 「…オメーと赤司は釣り合わねぇよ。」 「…わかってますよ!でも、」 他人に言われなくても解りきってる。 それでも好きな気持ちはどうすることもできなくて、赤司君の私に対する態度は変わらなくて。少しでも期待してしまう自分が嫌になって。赤司君は彼女のことをとても大事に想ってる。 だから、私と赤司君が結ばれるなんてあり得ないこと。わかっているのに、赤司君の姿を見ると心が裂けそうで仕方なかった。 「………うっ……」 泣いて楽になれればそれでいいのに。いくら涙を流しても、この気持ちは消えてくれないの。 「……虹村先輩っ酷いです。」 「さっさと、赤司のこと忘れればいいだろ。」 「それができないからっ辛いんですよっ!」 いきなり後ろから抱きしめられて、「気が済むまで泣けばいい。」と「そばにいてやる。」と虹村先輩はそう言って、普段はマネージャーにすら厳しいくせに、こんな時だけ優しくしないで。 ぼろぼろと止まることなく、雫が零れる。 「……なぁ、忘れられる方法一つだけならあるぜ?」 「どうすれば、いいですかっ?」 一息ついて、虹村先輩は囁いてきた。 「早く俺のこと好きになれよ、ばか、」 苦味の後の貴方の甘さ (気が付けば、貴方はいつだって、私のそばにいたの。) ----------- 最近、虹村先輩が好きすぎます。単行本にも登場したし、やっと書けました! いちゃらぶも書いてみたいです、、、 |