くろばす | ナノ







お兄ちゃんなう!の続きです。






私のお兄ちゃんは一言で言ってしまえば、ただの変人です。


今朝も私の歯ブラシを使用しようとしたので、思いっきりビンタしてやりました。
綺麗な顔に傷が付こうが、私には関係ないもん!


「…そんなに僕と間接キスするのが恥ずかしいのか。」

「気持ち悪い!どうしてそんなにポジティブなの!?」


私専用の箸やコップを使っていたり、私の布団に潜り込んでいたり、毎日毎日呆れることしかしません。

そして、そんなお兄ちゃんを好きな自分の趣味にも呆れます。どうして、こんな頭おかしい人を好きになってしまったんだろう。


私の両親が事故で亡くなり、赤司家に養子として迎え入れてもらってから早くも10年。現在、中学生の私もあと2年経てば高校生だ。

今日、学校で進路についてのプリントを貰った。自分の行きたい道を選ぶ時がもうすぐ来る。私を育ててくれた二人に恩返しするために、いい高校、いい大学、そして、大手に就職したいと思ってるの。赤司家の恥にならない生き方をしたい!

……そういえば、一足先に中学を卒業するお兄ちゃんは、どうするんだろう。




「…僕は家継ための勉強で京都の洛山高校に行けと言われているよ。さすがの僕も父上の命令には逆らえないからね。」

「え?」

「…もしかして、僕がいなくなるのが寂しいのかい?」

「ちょ、ちょっと驚いただけだし!全然寂しくない!」



引き攣る顔を必死に隠した。私は心のどこかでお兄ちゃんとずっと居られると思っていたのかもしれない。
だって、今まで毎日、毎日、お兄ちゃんと一緒だったから。朝起きた後のおはようも、夜寝る前のおやすみも。

家族だからこそ、永遠はあり得ないことなのに。

今は私に付きまとってくるけど、いつか、お兄ちゃんだって素敵な人と結婚するときがくる。



それは兄妹では、できない事。



お兄ちゃんのことね、誰にも取られたくないくらい大好きだけど、「お兄ちゃん」から離れられない私はきっと弱虫だ。

でも、踏み出せるわけない。今が大事だから。家族が大好きだから。

このままでいいと、逃げてしまうの。
















季節が変わりゆくのは一瞬で、一年なんてあっという間に過ぎて行く。お兄ちゃんは、もうすぐ京都に行ってしまう。


「ねぇ、なまえ。向こうに行っても寂しくないようにさ、」

「うん。」




「…僕になまえのパンツかブラジャー下さい。」


ぶちん。この音は私の頭の何処かが切れた音。「両方でも構わないよ。」と鼻の下を伸ばしている変態に一発顔面パンチを食らわせました。


「…なまえの愛の鉄拳、中々効いた。」


殴られたのにも関わらず、お兄ちゃんは幸せそうに微笑んでいます。気持ち悪いです。


「今、シリアス展開だったのに、なんでぶち壊したの!!」

「……だって、僕の愛にそんなものいらない。」


ひょいと私はお姫様抱っこをされて、足をバタつかせて暴れる私を落とさないように、お兄ちゃんは自分の部屋へと向かいました。

そのまま、ベットの上に落とされて、ちょっと待て。なんで押し倒されてるのかな、私。意味わかりません。
そして、お兄ちゃん。なんで上を脱いでるの。ちょっと待って待て待て待て待て待て。待って!!!いくらなんでも飛躍しすぎではないでしょか?!



「…随分前に約束しただろう。近親相姦しようって。」

「してないしっ!」

「いい加減、素直になれ。全部受け止めるから。僕は愛してるよ。」

「嘘つき。冗談言わないで。」

「……疑うなら何度だって言ってやる。愛してる。」

「や、」

耳を塞ごうとする私の手首を掴んで、彼は何度も囁いて来る。好きだって。愛してるって。

お兄ちゃんの整い過ぎてる顔が近づいてきて、私の唇は塞がれた。初めてのキス。いけないキス。


でも、嫌じゃないの。


「なまえも好きだろう、僕の事。」

「ちがう。」

「なら、拒んでみせてよ。」



そんなことできるわけない。

離したくない。でも、近づきすぎるのも苦しい。

好きで、好きで、好きすぎるからこそ、認めてしまったら、告げてしまったら、彼が居なくなった後が辛くなるだけだ。

わかっているのに、私の気持ちは抑え切れないほどに高まっていたのかもしれない。






「……行かないで、征十郎。」



小さく漏れってしまった声は、もちろん彼に届いてしまった。


「…なまえ…」



今でもはっきり覚えてる。

出会ったばかりの頃、泣きじゃくる私を慰めてくれたのも、人見知りの私を家族の輪にいれてくれたのも、全部全部、征十郎だったの。



「…父さん、母さん。ぼくはなまえと一緒に暮したい。…お願いします。」


それとね、私、知ってるよ。幼い征十郎がそう言ってくれたこと。

一人ぼっちになった私に温かい場所をくれた。

春も夏も秋も冬も、ここで征十郎と過ごした時間の全てが私にとっては宝物。


ありがとう。だいすきだよ。って、やっぱり、言葉にはできなかったけど、彼の赤い目は私の心をわかってくれているような気がした。






















「……………」

「お兄ちゃん…?」


黙り込む彼は俯き、何かに堪えるように身体を震わせている。

もしかして、泣いてる…?



「……なまえが、なまえが、なまえが10年目にしてようやく僕の事を名前で読んでくれた。

もちろん、お兄ちゃん呼びも思わず勃ってしまうほどに萌えるのだけれど、呼び捨てはあれだ、恋人では当たり前のことだろう?そうか、ようやく両想いなのか、よくやった僕の息子。よく耐えたよ僕の息子、それじゃあ、早速セックスし、よ…うっ!!!」


お兄ちゃんの息子とやらを蹴ると、彼のお口が大人しくなりました。



「…京都でもどこにでもいってしまえ!一生帰ってくるな、くそ兄貴っ!」


「なまえ、ま、待ってくれ!」









私とお兄ちゃんの関係はまるで、切れない糸みたい。

私と兄の恋事情


私の本当の両親には申し訳ない気持ちもあるけど、なんだかんだ言ってね、1番近くにいれるこのポジションでよかったなって、思っているよ。

私は征十郎の妹。征十郎は私の大事なお兄ちゃん。

恋人になるのは、まだまだ先のお話です。



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お兄ちゃんが残念すぎてごめんなさい。突発文パート2!

まだ続くかも?