※シスコン兄の赤司さま 「ねぇ、なまえ。」 「なに?」 「そろそろ二人で禁断の果実を齧ろうか。」 「今すぐくたばっていいよ、お兄ちゃん。」 「ああ、もっと呼んでくれ、お兄ちゃんって!」 「朝から気持ち悪いからっ!ってゆうか、抱きつかないでよっ!」 「いいじゃないか。減るもんじゃないだろう。」 「変態オヤジみたいなこと言ってないで、早く学校行こうっ!」 「はいはい。わかったよ。」 生まれてくる子供は親を選べないと言うけれど、兄妹も同じく選べるものではない。もしも、生まれ変われるのなら今度はこの人の妹にならない運命を勝ち取ってみせる!と誓ってはみたけど、今現在どうにもならない事実に嘆息が漏れた。 ちなみに冒頭で兄が言っていた「禁断の果実」とは、神話のアダムとイヴが食べてしまい、エデンの園を追放されたと伝わるもの。そして、その果実が指したのは、実は近親相姦のことだったとか。兄に熱弁されたから、嫌でも覚えている。 つまりはお兄ちゃんはさっき私に「身体の関係持とう。」と言っていたの。お兄ちゃんとだなんて、考えただけでもゾッとする。 「でも、僕となまえは血が繋がってないよ。つまり結婚だってできる。」 「それでも、兄妹に変わりはないでしょ!」 「だから、近親相姦しようって言ってるじゃないか。」 「意味わかりませんっ!」 「簡単に言うと、なまえとセック「言わなくていいからっ!」 学校に着くまでの短い時間で、私は何度溜息をつきそうになったかわからない。 変わり者の兄を持つことになったのは、私が小学校1年の時。 両親が事故にあって、知人の赤司夫妻が私を引き取ってくれた。赤司家の養子になって、不自由な思いを一度もしたことはない。むしろ、お兄ちゃんと同じくらい愛を貰った。ときにはお兄ちゃんよりも優遇されてしまったこともある。そこは彼に悪いなって感じるけど。でも、感謝してもしきれないくらいで、とにかく私は二人が大好きだ。私の居場所が赤司家でよかったと心から思う。 ただ一つを除けば…そう、それは一個上の兄、征十郎のことだ。 この変人な兄さえいなければ、私の平穏は保たれると思う。 昨晩だって、「一緒に寝よう。」としつこく私の部屋の扉をノックし続けて、煩いってお父さんに怒られてたの、この人。 「昔は僕と結婚したいと言ってたのにな。」 「いつの話引っ張ってきてるのよっ!無効に決まってるでしょっ!」 「でも、僕はあの頃からお前を愛してるよ、なまえ。妹だなんて思ったこと、一度もないから。」 綺麗な赤目が私をみている。中学に上がってから、この人はやたらと「好き」だの「愛してる」だの甘ったるい言葉を口にするようになった。どうせ、悪い冗談に決まってる。わかってるのに、見詰め返すことができない。 悔しいけど、その整いすぎてる顔のせいだ!いつ見ても彼は恰好いい。とか調子に乗るから絶対に本人には言わないけど。 「お前はすぐ目を逸らすね。照れ屋だな。」 「違うっ!」 「ほら、やっぱり逸らす。とても可愛い。」 「だから、違うって!」 「少しは僕のように素直になることも大事だよ。」 ぐいっと腕を引っ張られて、耳に彼の息が掛かる。どきんどきんと高鳴る心臓に気付かないふりをした。 「愛してるよ、なまえ。誰にも渡さない。僕のものだ。」 「私は誰のものでもありません!」 「それじゃ、早く僕のものになってよ。」 「いやです!」 お兄ちゃんなう! 私の兄は今日もシスコン具合が異常です。 本当はね、気を緩めたら口角が上がってしまいそうなの。 でも、教えてあげない。 好きだって気づいてしまったら、きっと後戻りできないから。いまの関係で満足してるって言い聞かせてる。 それはお兄ちゃんには秘密です。 -------- 突発文です! もしかしたら、続くかもw |