Nを弟として迎え入れましょう


珍しくワタルに呼ばれてリーグへ行くと、いつもに増して真面目な表情のワタルがいた。
何を難しい話をし出すかと思えば先日遠いイッシュ地方で起きたプラズマ団関係の騒動の話。なんでも王様が行方不明らしい。
その王様はNといって、薄い緑色の髪をした少し不思議な雰囲気を醸し出す青年らしい。私からしたら「だからどうした」状態である。
さらにその王様を探してほしいなんて言われたら、まぁ…帰るよな、普通。

そんな感じでチャンピオンとして与えられた仕事(別にチャンピオンじゃなくてもよくね?)をほっぽりだし帰ってきた訳だ。
そしたらなんと予想外な展開が待っていた。私の暮らしている島は私のポケモンたちに守られている。それなのにそこに自然に馴染んでいる緑色の存在。
そしてその緑色した彼が醸し出す空気で私は悟った、こいつが行方不明の王様なのだと。

「あんた誰?ここで何してんの」

私は問いかけた。もちろん警戒することを忘れずに。
彼は私を見て少し驚いた表情をしたものの、動揺は見せず私の名前を呟いた。

「・・・なんで私の名前を知ってるの?」

「彼女に聞いたんだ」

彼が向いた”彼女”のほうを見るとそこにいたのは私のポケモンでこの島のお母さん的存在であるハピナスがいた。
彼女から聞いたって・・・どういうこと?私が怪訝そうに見ていたのに気付いたのか彼は説明を始める。

「僕は小さいころからポケモンといることのが多かったから、自然とポケモンと話せるようになったんだ」

普段だったら「馬鹿言うな」と一掃できることだった。でも彼の眼、空気、全てがそれを事実だと語っている。
それに私がこの島に住んでいると知っているのはワタルと四天王の皆。あとはマツバ兄と親、レッドさん、グリーンくらいだ。だから誰かに会って名前を聞くなんてありえない。(ほら、どう考えても皆勝手にいうような人じゃないしね)

「・・・わかった。信じてあげる。で、此処で何してたの?」

「ありがとう。僕はN。此処で彼、レシラムを休ませてあげたくて・・・勝手にごめん」

レシラム・・・イッシュ地方のポケモンだろうか?真っ白い姿はどこか神々しく、美しい。

「・・・きれいなポケモン・・・」

私の呟きはおそらく聞こえなかったのだろう。何も反応はなかった。
もっとよく知りたいと思った。それに彼は今追われている身。もしこのまま放り出せば捕まってしまうかもしれない。・・・いや、捕まえるべきなのかもしれないけど。
でも私には彼がプラズマ団の王様で悪いことをしていたなんて信じられなかった。・・・なんでかはわからないけど。

「うん。私も鬼じゃないからね、疲れがとれるまでここにいてもいいよ」

「ありがとう」

ふわりと笑った彼の表情は嬉しそうで、それでいて悲しそうだった。


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