救世主と私
「紫原は、苗字さんのことが好きなのか?」
「ううん、違うよー」
聞きたくないことを聞いてしまった。ショックでその場に固まる。
むっくんに言い忘れた重要なことがあってむっくんを追ってきた。そしたら赤司君があんなことを聞いていて・・・。
急いで扉に隠れて息を潜めた。そしてむっくんのあの回答。
「(・・・っ、むっくん・・・)」
そこに黒子君が入ってまだ会話が続いてるみたいだ。それでも私の耳には入ってこなかった。いや、正確には頭がついていかなかった。
それほどまでにむっくんの一言は私にダメージを与えた。
私が放心している間に皆集まって、話も終わったらしい。彼らは教室に戻っていった。
私はというと見つからないように少し離れたところにある茂みに身を隠していた。
「(・・・早く皆行って・・・っ)」
「苗字さん」
「っ・・・、赤司君・・・」
名前を呼ばれて上を見れば赤司君が立っていた。その瞳は楽しそうに歪んでいて、少し怖い。
「覗き見?感心しないな」
「あ、ごめんなさい・・・。むっくんに用があって・・・」
「ふぅん、それでさっきの会話を聞いてしまって出てこれなくなった・・・ってところかな」
「・・・」
全てをわかりきってるような表情、しぐさ、怖かった。
「・・・そんな怯えた顔しないでもらいたいな。これでも反省はしているんだ。軽率だった」
「・・・?」
赤司君が何を言ってるのかわからなくて首をかしげる。すると赤司君は一度ため息をついて口を開いた。
「まさか苗字さんが来るとは思ってなかったんだ。・・・あんなこと聞いて、すまなかった」
「・・・っ、・・・あ、いいんです。もとはと言えばバスケ部の集まりに来た私が悪いんだし・・・。それに、わかってたんだ、本当は」
「わかってた?」
「むっくん、身長の大きい女の人が好きなんだって。だから、私じゃダメなんだって」
涙腺は崩壊寸前。それでもここで泣き崩れるわけにはいかない。これ以上、赤司君に迷惑はかけられない。
そう思っていたら突然腕を引っ張られ、抱きしめられた。驚いて暴れる私を赤司君は強い力で抑える。
「辛いなら泣けばいい」
「っ、でも!」
「・・・今日のことは誰にも言わない。だから泣いたらいい」
赤司君があまりにも優しく言うから、私はそのまま思いっきり泣いた。
(・・・っ、(むっくん))((さて、これからどうするかな))
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