黄瀬君と幼馴染


「何、やってるんスか」

「き、黄瀬君・・・!?」


どうして・・・ここに涼太君が・・・。



「もう一度聞くっス。何、やってんスか?」

私が目をあけてみると相手の女の子の手首をつかんで怒った表情を浮かべる涼太君がいた。
いつも女の子に優しい涼太君から想像もできない圧力に私を呼び出した彼女たちはもちろん、私も動けなかった。

「あ、あのね黄瀬君これは違うのよ・・・!」

「・・・何がっスか。それに、この手はなんなんスかね」

「っ、痛い!」

彼女が手を振って涼太君を振り切る。その手首には赤く痕がついていた。
彼女は少し涙目になって涼太君を見上げている。でも涼太君はそんな彼女に冷ややかな目を向けている。

「痛い?あんたが名前にやろうとしてたことより全然痛くないっスよね・・・。もう俺達の前に現れないでください」


涼太君はそう言い放つと私の手を取りそのまま歩き始めた。ひっぱられて少し痛い。

「りょ、涼太君!どこ行くの!?」

「・・・」

無言で歩いていく涼太君。私は何も言えぬままあまり使われない化学準備室に連れてこられた。
教室に押し込まれ、鍵をかけられる。

「・・・名前」

呼ばれて涼太君の顔を見るとすごく泣きそうな表情をしていて、私は思わず涼太君を抱きしめた。

「涼太君、守ってくれてありがとう」

「・・・名前、っ、ごめん」

そのまま縋るように私を抱きしめ、強い力を込めてくる涼太君の背中をさすることしかできなかった。
そのあともしばらく「ごめん、ごめん」そう繰り返す涼太君の背中をさすり、慰め続けた。


思い返せば昔もこんなことがあった。
私がいじめられそうになって、涼太君が助けてくれた。そのあと涼太君は私に謝ってきて、私が抱きしめて慰める。
こういうところが変わってないのがすごくうれしい。

「ねぇ、涼太君。もうさ、隠すのやめようよ。だって私たちは幼馴染だよ?やっぱりつらいよ、隠してるの」

「でも・・・」

「隠してたら余計怪しまれるし、堂々と話せないし。でも他の人と涼太君が話してるの見ると悲しくなるし。でも話せなくて辛いし・・・「・・・名前」ん、なぁに?」

話の途中で名前を呼ばれ、ついでに口に手を当てられた。
涼太君の顔を見上げると涼太君の顔は真っ赤になっていて・・・。わけがわからない。

「・・・名前、それって・・・、俺のこと、好きって言ってるんスか?」

「へ・・・えっ!!」

言われて、顔が真っ赤になるのを感じた。
いままで涼太君のことを『大切』だと思ってた。だから『好き』だなんて考えたことなくて、でも今言われて否定する気にはなれなくて。

「・・・あ、あのっ、えっと・・・あ・・・」

「名前、落ち着いてくださいっス」

「私っ、あのね!「ストップ、先に言わないでください」




「名前が好きっス。小さいころからずっと、名前が俺の一番っス!」


「っ、・・・」


「だから、俺と付き合ってください」


真剣な涼太君。私は目が離せなかった。
顔は熱いし、変な汗出てるし、もう最悪で。でも心だけが満たされてる感じがする。
私はもう何も言えなくて、ただひたすら頷いた。



黄瀬君と幼馴染


(そのまま重ねられた唇は暖かくて)(でも少し震えていた)


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