幼馴染と距離
「あ、苗字さん、おはようっス」
「黄瀬君、おはよう」
朝から涼太君と話せるなんて、今日はついてるなって思う。たぶん涼太君は朝練終わりなんだろうな、昇降口で会った。
クラスが一緒だからそのまま二人で歩いて教室に向かう。涼太君が部活でどんなことがあった・・・とかたくさん話してくれるから不思議と会話が途切れることはない。
「あ、もう教室つくね・・・やっぱり、別々に入ったほうがいいのかな?」
「あー・・・やっぱり、そうっスよね・・・」
ちょっと残念そうな表情は昔となんにも変りない。昔から私の知ってる涼太君だ。
「んぁ?なんで名前と黄瀬が一緒にいるのよー!名前おはよ!」
「アズちゃん!おはよう!!」
「幸崎っち、さっきぶりー」
「名前ー!さっさと行こ!黄瀬は後から来なさいよね!」
「ちょ、幸崎っち!それはひどくないっスか!?」
ビシッと指をさしながら言ったアズちゃんに涼太君は反論する。その姿を見るとやっぱり部活で仲いいんだろうな、とか考えてしまって。ちょっと嫉妬した。
「いいから、とにかく黄瀬は後から来ること!いいわね!!・・・さ、行こ、名前」
「あ、うん・・・。えっと、黄瀬君ごめんね?」
「・・・いいんスよ。また後でね」
「うん」
お互いに手を振って別れた(そんなことしなくてもすぐに会えるんだけどね)
やっぱりちょっとさみしいなって思うのは、私が幼馴染離れできてない証拠なのかな・・・?
「名前、黄瀬とは・・・」
教室に入って、席についてすぐにアズちゃんに言われた。全ては言われなかったけど、わかってる。学校で涼太君と関わることがどれだけ危ないことか。
「・・・わかってるよ、アズちゃん。大丈夫だから、ありがとう」
「・・・ならいいんだ。お願いだから、心配させないで?」
「うん」
わかってるんだ、本当に。私と涼太君が話すだけで涼太君のファンの女の子は嫉妬する。ファンの女の子たちは私と涼太君が幼馴染って知らないし、たぶん言っても理解してくれない。
もしも私が呼び出されたりしたら100%守れる保証はない。だからアズちゃんは涼太君と私が接触することを避けようとするし、涼太君も気を付けてくれる。
「(でも・・・)」
(やっぱりさみしいよ)(せめて実家だったら・・・夜とか話せたのにな)
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