電車での告白
※チャリヤカーの設定ガン無視です


学校帰りの電車の中で、佐藤と肩を並べて座っている。別にそれほど親しいわけではないがこいつが勝手についてくるのだ


高尾と同じくらい俺に話かけてきて、うんざりしているはずなのに接触を絶とうとは思わない


むしろ、こいつが他の男と話していたりすると胸が裂けるように痛んだり、そんな男は放って自分の所に来てほしいとさえ思ってしまう


そしてそんな自分を嫌だと思わないことが1番不思議だった


「…今日は静かだな、何か悪いものでも食べたのか佐藤」


「ん……」


「…なっ」


今日は不思議と静かだなと思っていたら、佐藤は眠っていた。そして俺が声をかけたときに電車が揺れ、あろうことか頭が俺の肩というか腕らへんに乗ってしまった


(こ、この状況は……)


なぜだか顔が熱くて堪らない。体もまるで石のように固まってしまい指一本動かすことができない


誰か、助けてくれ……


「おわっ真ちゃん?今日電車なんだ」


「高尾!」


願いが届いたのか高尾が目の前にいた。高尾は俺の隣に視線をやると、とても驚いた顔をした


「て…ちょ!待って女の子?うっわ俺邪魔だよね!!まじごめん!」


「ま、待つのだよ高尾!こいつは佐藤なのだよ!」


その場から去ろうとした高尾を慌てて止める


「あ、姫ちゃん?なんだ良…くねぇし。邪魔じゃん俺」


「邪魔ではないのだよ。助けてくれ」


「え?何を」


戸惑う高尾に理由を説明すると、腹を抱えて笑い出した


「ぶはっし、真ちゃんまじで?く、くくく腹いてー!にしても真ちゃんがねぇ…ぐふっ」


「笑い事ではないのだよ。なんとかしろ」


「はいはい。その前にさ、何で自分が動けないか考えた?」


「そんな余裕はない」


「ぶはっ」


再び笑い出した高尾を睨むと手をひらひらさせながら謝ってきた


「悪い悪い!でもそこまで分かってんなら後ちょっとじゃねーの?」


「何がなのだよ」



「それは自分で考えろって!つか知ってる?姫ちゃんって男子の間で結構人気あんだぜ!今日も2年の先輩に告白されたらしいし?可愛いくて明るいしそりゃモテるのもわかるよなー。じゃあ真ちゃんまた明日!あー明日が楽しみだぜ」


「ま、待つのだよ高尾!!」


なんだかご機嫌な様子で高尾は去ってしまった

「なんなのだよ……」


高尾が去ってから、意識が佐藤にしかいかない


どうすればいい…


アナウンスで、俺が降りる駅名が告げられた。だがこいつの幸せそうに寝る顔を見ると、起こす気にはなれない


結局電車は次の駅に走り出した


腕にかかる体温を感じながら高尾の言葉を思い返す


こいつがモテる…?

確かに顔は整っているし性格も…まあ高尾に似たところはあるが目立つタイプだろう。正直どうでもいいこと、のはずなのになぜこんなにも気になってしまうのか


そしてなぜこんなにも触れている部分が熱いのに、振りほどくことができないのか



まとめてしまえば簡単だった。俺は佐藤に好意を寄せていたのだ


こんなにも簡単なことだった


「ん…?」


「ようやく起きたか。」


「お、緑間くんおはよう!」


「……おはようじゃないのだよ。早く離れるのだよ」


「え?あ、ごごごごめん!」


佐藤が起きたのは良いが、体制はそのままで顔だけこちらを向いている状態になってしまった。……つまり、非常に近い


自分の状況を理解した佐藤は瞬時に俺から離れた。涼しくなった肩を寂しく感じたが、顔が真っ赤になり恥ずかしそうに俯いた佐藤を見て自分も再び熱くなってきてしまった


「私、ずっとあの体制?」


「ああ」


「もしかして寝顔見た?」


「当たり前だろう」


「ああああああああ」


「そんなに恥ずかしいのか?」


「当たり前だよ!和成くんとか他の男子ならともかくよりによって緑間くんだなんて…」


その発言に少しムッとしてしまう


「それはどういう意味だ」


「え!?いや意味とかはその…」


「はっきり言え」


「あ、えっと好きです!!」


耳が割れるかと思った。それくらい大きな声だったから、周りの乗客はこちらを見ており、どこからか高尾の笑い声が聞こえた気がする


しかしそんなことはどうでも良い


「今のは、本当か?」


「嘘なわけないじゃん!てか和成くん…後で覚えてろよ……」


「名前」


「え?」


「名前で読んでほしいのだよ」


「し、真太郎……?」


「それで良い。告白の返事がまだだったな」


俺は佐藤を引き寄せ誰にも聞こえないよう耳元で囁いた


「俺も姫が好きなのだよ」



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