間違い電話

※黄瀬が悲恋






あー


暇だな


学校から帰宅して風呂に入り終わった後の時間を持て余している



「こういうとき、彼女がいればなー。電話とかメールとかできんのに」



別にモテないわけではないが顔目当ての女なんかこちらから願い下げだ



自分以外のモデルが載っている雑誌を見ていたら携帯が鳴った



「誰だよ夜なんスけど」



寛ぎの時間を邪魔され苛立つが、着信相手を見て飛びあがる



「え、え、ひめっち!?」



電話の相手は意中の人だった



「え、なんで俺に?何の用事っスか!?いや待て待て待て落ち着け。深呼吸っスよ深呼吸」



息を整え手汗を拭き、携帯を握りしめ電話にでる



「あーもしもしひめっち…」



「あ、やっと出たー!出るの遅いよ赤司!!」



「え…」



彼女の口からでた名前に先程までの浮かれた気分が一気に下がるのを感じた



俺が戸惑っている間にもひめっちは楽しそうにマシンガンのように喋り続ける



その声はいつもの彼女のものではなくまるで恋してる相手に話しかけるような…



いや、しているのだろう



赤司っちがどう思っているかなんて知らないし、興味もない。もしかしたら付き合ってるのかもしれない



でも、俺が失恋したことには変わりない



「赤司、聞いてる?」



ひめっちの問いに俺は答えることができない



「話さないなら話さないでいいから聞いてて、あのね私―」



嫌な予感がした。続きを聞きたくないのに携帯を耳からはなすことすらできない


ひめっちは息を整えるように深呼吸をした



まるで先程の俺のように



「私、赤司のことが好きだったの」



「っ!」



頭を鈍器で殴られたような衝撃に動揺してる自分と、彼女の言葉に納得しどこか冷静な自分がいる



これが、赤司っちじゃなくて俺にだったら良いのに


あんたの口からそんなこと聞きたくなんかなかった


胸はこんなに高鳴っているのに、夢さえも見れない



「赤司、急にこんなこと言ってごめん。返事はいつでもいいから」



「…残念。俺っスよ」



「黄瀬くん!?」



彼女が電話の向こうで慌てているのを感じ、口元が弧を描く


俺って性格悪すぎ



「な、なんで間違いだって言ってくれないの…」



「すみませんっス。」



盗み聞きしたようなものだ。嫌われても仕方ない。まあ彼女はこんなことで俺を嫌いになったりはしないだろうけど。


その程度には好かれている自信がある


だけどね、ひめっち…


あんたの好きを聞いてしまった俺は、もう止められないっスよ



だから お願い


もう少しだけ友達でいさせて



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