人気者

「高尾ーまた明日なー」



「おー」



廊下を歩けば引っ切りなしに声を掛けられる人気者。それが高尾和成だった。



朝でも昼でも放課後だって、隣に私がいても関係なしに声をかけられる



「姫?」



顔を覗かれたので逸らす



「何でそんな機嫌悪いの?俺なんかした?」



「…何もしてない」



「…ならいいけど」



止まっていた足を動かそうとしたら、女の子が笑顔でこちらに駆け寄ってきた。



私とは友達でも知り合いでもない。つまり……



「和成!」



「みっちゃん」



親しげな様子に思わず眉をひそめる



和成の中学からの友達だ。でも女の子は好意を抱いていることは一目瞭然だ



さっきから和成に気づかれないように私を睨んだり、腕を絡ませたりしている



……折角部活が休みで緑間くんがいないのに、なんでこうなるかな



緑間くんのことは嫌いではないけれど、和成と二人きりになれる時間は少ないから大切なのに



そう思ってるのは、私だけなのかな



和成をちらっと見ても、こちらには気づかないで女の子と楽しそうに話している



「…和成、私先帰ってるね」



「あ、姫…!」



勝ち誇ったような女の子の笑みに耐え切れず駆け出した



――――


「逃げちゃったねー、まあいいじゃん和成ー。あんな女より私の方が」



「…名字で呼んでくれない?あと何言おうとしたか知らねーけど、姫は君より良い女だよ。すくなくとも俺に離れたくないって思わせるくらいにはね。じゃ」



―――


学校近くの公園まで走っていたら、和成が追い掛けてきた



「姫!待って!」



それを聞いて私はさらにスピードを上げる



「おい、止まれって」



和成に敵うわけもなく、肩を掴まれ振り向かされた


見上げてみると、笑顔な彼は息一つ乱れていない



「足早すぎだって……」



「バスケ部ですから。なあ姫。なんで置いてったの?もしかして嫉妬した?」



ニヤニヤと笑う和成には、私の気持ちなんてもう分かっているのだろう



「…ちょっと嫉妬した」



「ぶっ…、あははははは!いいねぇ、ちょっと?あはは!」



「な、なんで笑うの……」



「ちょっとじゃないっしょ?俺が逆の立場なら相手の男締め上げるね」


「締め上げるって……」



「ま、素直になれって。本当にちょっと?」



「……実は、かなり」



「くっ、あははは!かーわいー」



和成は私の頭を優しく撫でる



「素直になった姫にご褒美しなきゃいけねーな」



引き寄せられ、和成の顔が近づいてきた


目を閉じて受け止めると、単純なものでさっきまでの気持ちはどこかにいってしまった



「俺はさ、学校のやつら好きだし、卒業まで仲良くしたいと思ってるけど…」



「…うん」



「卒業しても一緒にいたいのは、バスケ部の人達と姫だけだぜ」



「……………」



「うっわ何その不満そうな顔」



「だって、緑間くんたちと同じ位置ってこと?」



「それは…まあいいじゃん。許して」




「良いよ、別に」



素っ気なく突き放し、歩きだすと和成が慌ててついてくる



「え、怒った?まじごめんね!でも女では1番」



「私は和成の全部で1番がいいの!絶対1番になってみせるから!」



緑間くんたちを超えてみせる!と意気込む私を和成は困ったような照れたような笑顔で宥めていた





――――


「てことがあってさー、可愛いのなんのって!真ちゃん聞いてる!?」



「……聞いているのだよ」



「真ちゃんは友達なのに俺の1番が良いんだって!カテゴリーが違うって何回言っても聞かなくてさー。困った困った」



「…嘘をつけ」



「聞いてる?真ちゃん」



「…高尾は間違いなく俺より佐藤が上なのだよ」


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