こっちを向け
※浮気




最近、黄瀬が彼女を自慢してくるようになった


前から付き合ってたのに何でいきなり牽制してきたのだろう…とは思わない


あいつが気づいたからだ



俺が黄瀬の彼女に恋をしていることを



正直色恋には興味がなかった。まあ健全な男としてあれな雑誌はいくつか持ってたりはするけど、欲と恋は全く別なわけで。


初めての恋に戸惑いを感じる暇もなく佐藤が黄瀬の彼女だと知った



「青峰君、聞いてる?」



「ああ、悪い」



俺は思考を中断し、佐藤の頭を撫でる


欲と恋は別


それはこいつも同じようで


俺との行為が1番好きらしい



「んで?黄瀬がどうしたって?」



「そう!それでね、涼太ってば本当に格好良いんだよ。授業中にダンク決めて女の子皆見とれてたの!彼女としては複雑だけど鼻が高いからいいや!」



「へー」



「青峰君てば……」



佐藤が飽きれた顔をしているが、延々と黄瀬の話を聞かされてるこっちの身にもなってほしい



「なあ、でも俺が1番なんだろ?」



「うん。もう私青峰君じゃないと満足できない体になっちゃった」



その言葉は、嘘だ



俺より上手いやつ、あるいは俺よりこいつを満足させるやつがいれば佐藤はすぐ俺から離れるだろう



でも、黄瀬からは決して離れない



つまりそういうことなんだ



恋と欲なんて、どっちを共にして満たされるかなんて知ってる



いくら抱いても虚しさしか残らないこの行為に意味なんてない



好きでこんな関係になったわけでもない



それでも



「青峰君、もっかいしよ。涼太はまだ撮影長引くってー」



「……おう。シャワーは浴びてけよ」



それでも好きな女から迫られたら嬉しいし、この関係を続ければ佐藤は少しでも俺を見るんじゃないかって


淡すぎる期待を、捨てきれない


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