「おい、姫いるか?」
ざわついてる教室内が一気に静まりかえった
それもそのはず
この海常で彼、笠松幸男を知らない者はいない
そして……
「笠松…先輩。」
「え?佐藤と先輩ってまだ付き合ってたのか?」
「ばっかお前、黙っとけ!!」
私と笠松先輩は一週間前、別れた
でも私はまだ先輩のことが好きだ。別れを切り出したのは私だけど、それは先輩が私を好きじゃないから
付き合って半年も経つのに手も繋いでくれない。キスだってまだ
この前黄瀬くんに促されて先輩と手を繋ごうとしたら、振り払われた
それが、決め手になり一週間の今日、別れを告げた
「…姫、ちょっといいか?」
先輩の近くへ行くと、相変わらず肩を震わせる
最初は意識されてるのかな、と思っていたけど半年も経っているのだからその線はないだろう
「良いですけど人目につくから場所は変えましょう」
「ああ」
私たちは人目につかない屋上へ移動した
「姫…」
「なんですか?」
「付き合っている間は、苦しい思いをさせて、すまなかった」
「え?」
「俺は俺なりにお前を幸せにしてやりたかったんだが、女が苦手であまり話さなかったせいか接し方がよくわからん。好きな女ともなればなおさらだ。お前が俺に愛想をつかすのもよく分かる。情けないことも分かっているが、それでもお前が好きだ。俺ともう一度、付き合ってくれ!」
先輩は勢いよく頭を下げる
先輩からは十分本気の思いが伝わってきた
「笠松先輩、顔をあげてください」
「お前に笠松先輩なんて他人行儀な呼び方をされるのはもう嫌なんだ!」
「じゃあ私…嫌われてなかったんですか?」
「お前を嫌うなんてこと、絶対ねぇ」
そっか
そうだったんだ
彼が私を拒絶した理由も、彼の私に対する想いも私たちはすれ違ってたんだ
「なら、私の答えは一つです」
恐る恐る顔をあげた笠松先輩に手を差し出す
「よろしくお願いします、幸男さん」
「あ、……ああ!」
幸男さんは満面の笑みで私の手を握った
――
「姫……頼むこれだけは…」
「駄目ですよ幸男さん。キスしてくれなきゃ泣いちゃいます」
「お前どうしてそんな性格になっちまったんだ」
「言葉にしないと伝わらないからです」
後日、私たちはバカップルとして有名になってしまいました
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