気持ちを認める
姫は灰崎の双子の妹
(黄瀬が少しゲスかもしれません)






「涼太、聞いてる?」

「もちろん。俺がアンタの話を聞かないわけないっしょ?」

「ならいいけど・・・」


どこか不満そうな姫をなだめてやると、機嫌が直ったのか再び話し始める


正直話なんて聞いていない。


好きでもない彼女に告白したのも、
デートなんて面倒くさいイベントに付き合ってやるのも、
ただ、ショーゴ君の妹だから興味があるだけ


今だって、双子なのに似ても似つかないあの兄貴と目の前にいる少女を比べて楽しんでいる。


自分でも酷いことをしているとは思うけれど彼女が嫌がってないなら良いよね?というのが正直な気持ちだ。


現に、姫は何が楽しいのか幸せそうに話をしている


適当な相槌をうっていると不意にその表情が曇る



「それでね、どう思う?」


「えっ…」



全然聞いていなかったので少し焦ったが、いつも通り適当に答える



「いいんじゃないスか」



笑顔で言うと、姫は悲しい顔をした



「そっか……。そうだね。涼太は、優しいから」



「姫?」



「今週の土曜日あいてる?」


デートに誘われていたのだろうか。


「あいてるっスよ」



「じゃあ1時に駅前で待ち合わせね。それと私もう帰る」


「もう?まだ2時間しか経ってないスよ、いいんスか?」



「うん。今日はいい。土曜日よろしくね」



「はいっス」





――日にちは過ぎ、あっという間に土曜日になった


男同士で出かける時よりもお洒落をして、姫の話を聞く心の準備までしてきたのに



「どうしてこうなるんスかね……」


「どうかした?黄瀬くん」


「何でもないよ」



ため息混じりで返事をしてしまったが仕方ないだろう。誰だこいつ


どうやらあの時姫は、俺にクラスメイトとのデートを取り付けたらしい


せっかくの休日をモデルスマイルで知らない女と過ごさなければならないのは苦痛だが、自分のせいだということは自覚している



……話くらい、聞けばよかった


姫と過ごす方がこの女と過ごすよりは充実していただろう



退屈な時間を過ごしていると、見覚えのある後ろ姿が視界に入った


「あ、やばっ…」


驚きで声もでない
姫は男と二人で歩いていた


「やばいって、どういう事スか?」


「え?聞いてないの?今姫と歩いてる男、私の友達なんだけど姫のことすきだから、デートしたいって。」


「デート……」



「ちょ、黄瀬くん!?」



姫が俺以外の男とデートをしている。



そう思った瞬間自分でも気付かないうちに走り出していた



「っ……」




毎日の練習で鍛えているからか、二人との距離はすぐに埋まった。姫は手を伸ばせば届く距離にいるのに、足が動かない



なんで、俺に女とデートなんてさせたの


なんで、そんな男と一緒にいるの


そいつが本命だから、俺に女をよこしたの


聞きたいことは沢山あった


しかし今何よりも心を揺さぶっているのは



1番ショックで仕方がないのは



時折見える姫が、今まで見たことのない笑顔をその男に見せていたことだった



落ち着け、自分はなぜこんなにまで動揺しているのだろうか


灰崎姫はただの興味で手を出しただけの遊びだったはずだ


それなのにどうして男と一緒にいるのを見ただけでこんなにも嫉妬をしているのか


嫉妬。そこまで考えてやっと分かった


「俺、馬鹿っスね……」


思わず自虐的な笑みを浮かべる



もう既に遊びではなくなっていたんだ


こんなにも、胸が苦しいのは、自分でも気付かないうちに本気になっていたから



認めてしまえば、こんな簡単なことなのに



「姫」



自分を奮い立たせて声をかけた




「涼太?」


姫は目を見開き驚いている



「俺、あんたのこと好きだ」


「え……」



「最初は、ただの興味本位で近づいて、遊びだと思ってた。けど、違う。あんたがくだらない話を幸せそうに俺に話してくれるの時間が凄い好きで、ショウゴくんとか関係なしに姫と付き合いたい。今まで嫌な態度とかとってごめん。これから真剣にあんたを見るから、俺だけ見てほしいっス」



「涼太……」


「な、なんで泣いてるんスか!?そんなに嫌?俺がもう嫌いに…」


「ちが……嬉しくて。涼太は私のこと嫌いなんだって思ってたから…ありがとお涼太ぁ」


しゃっくりをしながら泣きはじめた姫に、男と後から追いついていた女もどうしたもんかと顔を見合わせるが、余計な心配だ


俺は姫を自分の胸に閉じ込め二人に見せ付けるように囁く


「悲しませてごめん。今までの分も、大事にするから…幸せにしてあげるっスよ、俺が」



「…ん。お願いします」



はにかんだ彼女は可愛くて、もっと好きになってしまった



「とゆーわけで!俺達の邪魔とか野暮なことしないでほしいっス!したら姫の友達でも容赦しないっスから!」



震える彼女を大事にしようと抱きしめる手に力を少しいれた



こちらをちらちらと見る野次馬にとびきりの笑顔で見せつけてやる


ああもう抱きしめるだけで満たされるこの気持ちは認めるしかない


悔しいけど、大好きっス



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