趣味ごと
とんとん、と肩を優しく叩かれそちらを見た



「教科書忘れたから見せて」



隣の席の佐藤さんが俺に話し掛けた



断る理由などない



「いいよ」


「ありがとう!」


笑顔で机をくっつけてくる佐藤さんが、とても可愛かった


……それにしても
机と机がくっついているということは、俺と彼女もそれだけ近いということで。触れそうな薄い肩とか、笑うたび揺れる唇とかに目線がいってしまうのは悲しいかな、恋した男の性というやつで。日向にバレたらダアホと言われてしまうだろう、言うつもりはないけれど


視界の隅で彼女を見ていると、不意に笑った


「どうかした?」


「あ、これ伊月君が書いたの?」


彼女が指し示すのはまさしく俺が書いたダジャレだ


「そうだよ。」



言ってからしまった、と思った


ダジャレはすごく面白いことに間違いはないが、それを認める人は少ない。むしろ俺がダジャレ好きだと知って引く人の方が多い


どうしようまじでどうしよう


彼女に引かれたら耐えられないと思い、言い訳を考えてしまう


「その、ごめん。俺ダジャレとか好きなんだ」


「何で謝るの?おもしろいよこれ」



「え」


なんだこれ佐藤さんが輝いて見える。天使だ天使にしか見えない



「伊月君ダジャレ好きなんだ」



そういって笑う彼女はとても



「……可愛い」



「え!?」



「あ」



つい、言ってしまった
しかし後にも引けずこうなったら押してしまおう



「俺佐藤さんのこと好きなんだよね」


素直に想いを告げると、佐藤さんは驚いてる顔のまま、真っ赤になった


「い、伊月く…」


「佐藤さんは?俺のこと嫌い?」


「や、皆みてる」


「気にしなくて良い。どう、好き?嫌い?」


クラスメイトや先生がこっちを見ているが気にしない

問い詰めると彼女はもう耳まで真っ赤で、混乱しているようだ


だけど多分佐藤さんよりも俺の方が心臓の音は速いだろう
体内を駆け回る血が熱くてどうしようもない


そんな瞬間が永遠に続くかと思われた時「私も、伊月君のこと、好き」


消え入りそうな声だが、確かに聞こえた。



「本当に?」



「うん」



「良かった……」



俺はヒューヒューだの騒ぎ立てているクラスメイトを尻目に、数人のキスコールに答えるべく、佐藤さんの肩に手を置く


「俺の趣味ごと受け入れてくれてありがとう。大事にするよ」



状況がわかっていない彼女の唇を奪い、これからのことを考えるのだった











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