「しょういちー……」
「なんや、また花宮にいじめられたんか?」
「ん…」
めそめそと涙目になりながら自分に抱きついてくる彼女である姫の頭を撫でながら甘やかす。しょうもない悪戯をする後輩の顔を思い出しながら溜め息をついた
「にしてもなあ…しつこすぎるやろ。これで今月何回目や?」
「わかんない……」
数えきれないと姫は言う。花宮と姫は同じクラスであまり仲は良くないらしいが、バスケ部を見学していた姫に興味が沸いたらしい
理由なんかどうでもいいが人の彼女にちょっかいをかけるのは気にくわない。好きなコほどいじめるにしたって子供かとツッコミたくなるくらい幼稚な思考だ
「私、嫌われてるのかなあ…」
「そんなことあらへん。気にせんでええよ」
慰めても姫の顔は晴れない。……こんな顔をさせてるあの後輩が本当に腹が立つ
「…わしがいるやん。それじゃ駄目なん?」
寂しそうな顔をして掠れた声をだす。拗ねたと勘違いした姫は慌てた様子でワシの頭をぐしゃぐしゃ撫でた
「駄目じゃない!駄目じゃないけど…やっぱり気になるよ…」
「ほう……」
ならばあいつには制裁を与えなければと頭を張り巡らしていると彼女がこちらを見てにっこり笑う
「でも、翔一がそう言うならやめとく。でもやっぱりクラスメイトだし仲良くしたいんだよねー」
「佐藤……と、てめえも一緒かよ」
「花宮!」
噂をすればなんとやら。姫を見つけて機嫌の良さそうだった花宮の表情がワシに気づいたとたんに曇る
「残念やんなあ、ワシが一緒で。何の用や?」
「…今吉に用はねえよ、佐藤貰ってく」
「私?なんで」
「さっきお前が暴れるから首もと引っ掻いたんだよ。俺がお前のな。だから保健室行くぞ」
「え…あ、本当だ」
自分の首を確認して傷を認めた姫は花宮に近づいていく
「じゃあ後でね。部活見に行きます!」
「待っとるわー」
花宮は勝ち誇った顔をして姫を連れていく。あかん、何もわかっとらんわ、あの顔
口元が弧を描き近くにいた女生徒が強ばった表情でこちらを見た。怖がらせてごめんな、でも仕方ないねん。
花宮が保健室で手当てするだろう姫の首筋に沢山つけたワシの残した痕を見て何を思うのか、どんな表情をするのか、楽しみで仕方がない
お前じゃ姫に痕をつけることはできへんからな
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