「姫ー」
誰もいないからと和成の家に泊まった次の日の朝。あくびと一緒に起きた私を呼ぶその声に振り返ると、いつもの格好良い髪型はどこへ行ったのか和成の頭は跳ねまくっていた
「……どちら様ですか」
「酷くね!?そこまで言うほどじゃねえだろ」
「いやいや結構酷いよ?自覚した方が良い。てかどうして呼んだの」
まさかその寝癖を直せとでも言うのだろうか。身構えていた私の目の前で和成は自分の下半身を近づけてきた
「……朝から元気だね」
「いやいやいや違えって!!誤解すんな!パジャマのヒモが絡まって解けないから解いてくんね?」
私にそう言うと和成は髪の毛をセットし始めた。え、普通逆じゃない?彼女が彼氏の髪をセットするパターンじゃないの?
釈然としないまま和成のヒモを解こうとするが、なかなか頑固なそいつは全然解けない
「解けないよー…」
「えー?もっと頑張ろうぜ」
そう言われもう一度挑戦するが一向に解ける気配がない
「てかパジャマ着てる和成が悪い!パジャマはく覚悟足りなかったんだよ!よってヒモはこのまま!」
「いやいや何で!?パジャマの何が悪いんだよ」
「パジャマじゃなくてヒモを固く結んだ和成が悪いの」
お互いの顔を見ながらにらめっこするように睨むが朝から子供みたいな喧嘩をしてることが面白くて、一緒に破顔した。
「ははは!何やってんだ俺等」
「本当朝から元気だよね、私たち」
しばらく笑いあっていたが、不意に和成の笑い声が止まった。何かを考えているように見える
「どうしたの?」
「いや……。結婚したら毎朝こんな感じなんかな、って」
「結婚!?」
突然出てきた結婚という言葉に大袈裟なくらい反応してしまった。しかし意識させた本人は至って真面目な顔のまま語りだす
「子供は三人くらいで男二人、女一人で…姫が味噌汁とか作ってくれちゃったりしてさ……うわなんか超幸せなんですけど」
「……勝手に私で妄想しないでよ」
とは言いつつ幸せそうな顔で私との未来を考えてくれるのが嬉しくてたまらない
「三人、かあ。でも女の子が一人はちょっとなあ」
「なら男二人、女二人だな。楽しみすぎて待ちきれねえ!」
「お金いっぱい稼いできてね、おとうさん!」
「金かよ!?まあいいぜ、俺が稼ぐからお前は専業主婦な」
今日は二人でも街を歩く予定だったけど、お家デートになりそうです
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