まだ寒さの残る3月の14日。そう今日はホワイトデー
先月チョコレートと一緒に幸せをくれたひめっちにお返しをするため今日はいつもより気合いを入れてデートプランを考えてきた。今日は絶対楽しませてやるっスよ!…と意気込んだもののかれこれ3時間も彼女が来ない。周りはカップルばかりで少しいたたまれない気になる。あーもう彼女がオレを見るからって睨むなよひがむからモテないんすよ?
「あ、黄瀬くん!?お疲れ様!!」
「さっきは格好良かったよ!まあいつものことだったな!ハハハ」
今日の朝行ったモデル撮影の、スタッフさんたちが話しかけてきた。 飲んでいたのだろうか酒の臭いがする
「用事があるとか言って実は独り身かー?黄瀬くんレベルなら選び放題だろ?」
「女には飽きたってか!さすが色男は違うねえ!せっかくだし飲みに行こうぜ」
「いやオレは…」
ひめっちが来るかもしれないし待っていたがったが酔っぱらいの力は強く強引に連れていかれる。
「用事があるんスよ…!」
「ほらほら速く速く!」
二人に連れていかれた場所は近所でも人気な飲食店だった。何でこんな場所に…本来なら今頃はひめっちと高級ディナーの予定だったのに……!
店内は賑やかでガヤガヤとしている。二人はカウンターへ着くとオレに絡んできた。それを笑いながら受け流しざわざわと盛り上がっている集団へ視線を移した。派手な学生が合コンをしているようで、楽し気にはしゃぐ彼らを少し羨ましいと思う
「ねえ姫、黄瀬くんどお!?格好良いよね羨ましいなあ」
突然オレと彼女の名前が出てきた。驚いて言われた方の人間を良く見てみると
それは紛れもなく姫だった。なんでなんでこんな場所にオレの約束は忘れていたの?
「涼太?涼太はね…」
何と言うのだろう。息を飲んで続きを待つ
「んー…優しいんだけど何か違うんだよね」
「あわないってこと?」
「そう!そうかも!今日もデート連れてくれるって言ってたんだけど涼太が予約するとこ高くて行きにくいしドタキャンしちゃった」
「えー贅沢!!」
女に続き笑い声が響く。
「まっ、あいつは金持ちぽいからなー。じゃあ姫ちゃんオレと付き合っちゃおうぜ?」
「えっ…」
軽薄そうな男が軽い調子で言った言葉に驚きを隠せない。姫はオレの女っスよ!?そうだよね!?
すがりつくような気持ちで姫を見ると満更でもない顔で相手を見ていた。ああもうどうして
「……確かに高尾くんなら明るくて退屈しなさそうだし良いかもね」
「だろ!?じゃあ付き合おう!オレ等恋人同士、的な?」
「違うっスよ!!」
「涼太?」
黙って聞いていたがもう我慢できない!酔っぱらい二人を置いていつのまにか姫の前に飛び出していた
「なあにやってんスか!姫はオレの女なんスよ!?自覚足りなすぎっス」
「ばか何言って…」
「好きなんス!」
オレの大声に店内が静まり返る
「好きなんスよっ……!なんで約束すっぽかしたんスか…もう飽きたっていうんスか?」
「涼太……」
姫は席を立ち上がりオレに抱きついてきた。泣きじゃくる子供を慰めるように頭を撫でてくる。その手のひらはいつもみたいに温かくて
「高尾くん。私ね、確かに涼太とは感覚とか感性とかあわないけど、一緒にいて飽きないんだよね。そこが一番好きなの」
「ひめっち…!!」
感動して彼女を見ようと顔をあげると、一緒に合コンしていた女性が笑いながら紙を上に掲げていた。その紙に書かれていたのはドッキリ大成功!!の文字
「プッ…ククッ」
「え…何どういうこと?」
「せーのっ」
「「「ドッキリ!!大成功ー!」」」
女子組がクラッカーを盛大に鳴らし拍手やらしている。男子組も囃し立てるように乗っかり煩かった集団が更に煩くなってしまった
「ドッキリ!??いつからっスか!?」
「涼太が私を待っていてくれたときからだよ」
その後、話を聞けばひめっちが待ち合わせ場所にむかっているときに以前から悩みを相談していた彼女の友達がダブルデートしているところに遭遇し急遽このドッキリを計画したらしい。偶然居合わせた高尾も持ち前のノリの良さでひめっちの相手役に
「なんでそんなこと…酷いっスよぉ…」
「ごめんごめん。だって涼太いつも高いとことかオシャレな店ばっかだし、そんな気張らなくても涼太がいれば満足だよって伝えたかったの。今からいつもの倍楽しもう!」
「そういうこと!彼女大事っしょ?悪い男に盗られないように満足させなきゃ本当にオレがとっちゃうぜ?」
不敵に笑う高尾を見返し鼻で笑って見せる
「百年早いっスよ」
さっき焦っていたのは確実にバレているだろうが格好つけなきゃやってらんない
苦笑いする彼女にとんでもないサプライズをしてくれた仕返しをしなくては
とりあえずオレの家でポケットの中に入っているこの指輪をあげるからね
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