言えなかったけど

以前から図書室で見かける彼女の様子が最近どうもおかしい。何かに悩んでいるように見える


「はあ……」

「どうかしたんですか」

「黒子くん…聞いてもらっていいかな」

「僕でよければいくらでも聞きますよ」

僕達は読書が好きでお互い図書室に通っているうちに顔見知りになり友達になり今では親友のような仲になっていた

「ありがとう。誰にも言わないでほしいんだけど最近赤司くんのファンからの嫌がらせが増えてて…」

「…また、ですか」

姫さんは赤司くんとも仲が良くしかも同じクラスなので話す機会は多い。しかしそれを妬む彼の隠れファンに度重なる嫌がらせを受けていた。


「やはり僕から赤司くんに教えます。このままでは君が危険です」

「でも、赤司くんが気にしちゃうかも…!赤司くんとは友達のままでいたいの」


「君は……」


ズキンと心が痛む音がした。友達でいたいと言いつつ彼女の顔は恋をしている女子そのものだ。不意に口がいびつに歪むのを感じた

「君は、赤司くんが好きなんですね」

「え…!?」

彼女の頬が赤く染まり僕の心が冷えていく。赤司くんと牽制しあうあの日々は何だったのだろう。赤司くんが姫さんにするあからさまなアプローチを阻止したりしたことはただ二人の邪魔をしていただけだった。

「姫!」

「あ、赤司くん…?」


図書室の扉がいきなり開き赤司くんが入ってきた。その瞳は姫さんのみを映し僕には目もくれない

「すまない…俺のせいで嫌がらせを受けていただろう。もう大丈夫だ。あいつらは絶対お前に手を出さない」

「あ、ありがとう。でも赤司くんのせいじゃないよ」

「いや俺のせいだ。これまで我慢していたがもう限界だ。好きだ姫。これからは俺に守らせてくれ」

「赤司くん…私も好きだったの」

「…ありがとう。もう傷つけさせない。まずはクラスメイトに報告しに行こうか。大丈夫俺の彼女を傷つける命知らずはいないよ」

「う、うん!…あ、またね黒子くん相談にのってくれてありがとう」


赤司くんと姫さんを見送った後、一人涙を堪える

言えなかったけど、僕だって君のこと好きだったんですよ




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