「だからね、黒子っちと火神っちのタッグは本当やばいくらいすごいんスよ!」
「ふーん」
またか、と思う
練習試合で誠凜に負けて以来涼太は黒子くんと火神くんのことばかり私に話してくる
おかげで会ったこともないその二人に対して異常なほど詳しくなってしまった
「でもやっぱ悔しいな…俺も黒子っちの相棒やりた…」
「涼太」
その二人が凄いのは分かるけれど会ったこともないし知らないものは知らない。私にとっては興味のない話だ。最初は涼太への愛もあり聞いていたが彼に冷めた今、つまらない話に耳を貸す必要はない
涼太は切れ長の瞳を丸く見開き私をきょとんとした顔で見下ろす
「もういいよ」
「…っ、なにを…スか」
私の声が冷たかったからか涼太は涙目になる。それを見てまたダメだなって感じた。冷めたはずなのにまだ繋がっていてもいいと思わせる程度には魅力をこの男は持ってる
「…その話、もういいよ」
「ひめっち怒ってるんスか?」
「怒ってないけど今は私たちの時間でしょ?せっかく二人きりなのに」
部屋に二人。それを指摘してやると先程の涙はどこへ行ったのか涼太の瞳がぎらりと光る。まったく世話のやける男だ
「じゃ、あまり時間ないし急ぐからついてくるんスよ」
涼太は急にしたり顔になって私を押し倒す
「12時までに帰れって言われたんじゃなかった?」
今はもう11時半
「…10分あればいける」
その後彼は宣言通り10分で満足して出て行った。自分だけでなく私も満足させたのは流石と言うべきか
涼太が出て行った後けだるさに身を任していると誰かから電話が来た。相手も確認せずに出ると妙に元気な声が聞こえてきた
「姫?お前今どこにいんのー」
「家だけどどうかした?」
「あ、やっぱ居たんだ。いや姫の家に行ったら黄瀬出てったの見えたから」
「見てたのって今もしかして……」
言いかけた瞬間家のインターホンが鳴り響く
慌てて向かいドアを開けたら和成がぎゅーっと強く抱き着いてきた
「寂しかったぜー姫!」
「苦しいって和成ちょっ…と、どこ触ってるの!!」
「許せよこんくらい。俺が自主練で遅くなるからって黄瀬なんか呼びやがって浮気してんの?」
「知ってるくせに」
そう、和成は私が涼太と浮気してることを知っている。にも関わらずその事実を受け止めながら私との交際を続けているのは何故か。決まってる
「ハハッそうだな。まあ姫が俺を1番好きなら関係ねーし」
「和成のそういうとこ、大好き」
涼太と和成の1番の違いはここだ。涼太は束縛を嫌うくせに私にはやたら激しい。そのいつしか重くなった荷物を取り除いてくれたのが和成だ。相談するたび心と体は近づいていった
「うーわ思いっ切り事後っしょ。ティッシュくらいごみ箱に入れようぜ」
「和成、速く速く」
「分かってるって。ほら来いよ姫」
涼太が付ける自己主張の激しい香水とは違う控えめだけど男らしい匂いに包まれ和成と二人、夜に溺れる
多少の浮気は許してね
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