これは恋なのだと
俺の幼なじみである姫は中学に入ってから良く赤司のことを聞くようになった

最初は気のせいかと思ったがテストやバスケなど日々の話題の中に赤司が出てくることが増えていた。気づいたのは最近だけれども

将棋なんか興味なかったくせに赤司が将棋を嗜むと知った途端自分もやるなんて言い出して…

「真太郎ー」

「なんなのだよ」

「ねえねえ赤司くんの好きな食べ物って何?」

ほらまた。俺に話し掛けるときは必ずと言っていいほど赤司の話…なんなのだよまったく

「そんなことを聞いてどうするつもりだ」

「怖いなー睨まないでよ。差し入れしたいだけ!」

「差し入れ、だと…?」

「そう!」

にこりと笑う姫を見て何だか心臓が痛むような気がした。なぜ赤司にやるのだろう。俺がまだ貰ってないというのに。なぜ自分はこんなにも、もやもやと晴れない気持ちになっているのだろう

「俺には、ないのか」

不満な気持ちはそのまま口から出てしまった。すると姫は目を見開いて驚いてみせる

「…意外。真太郎は人の手料理なんて食べたくない人だと思ってた」

「た、確かにそうだが…お前は別なのだよ」

そう、他の奴とは違う。他人の手料理など死んでも食べたくないが姫が作ったものならいくらでも食べたいと思う。この気持ちはなんなのだ…


「ん?そこにいるのは…緑間と佐藤か」

「あ、赤司くん!!こんにちは!」

「ああ」

赤司が来た途端姫は俺などいなかったように話し始める。二人を取り巻く雰囲気が甘い気がするのは気のせいではないだろう

「緑間、俺はこれから佐藤と話がある。先に部活を始めてくれ」

「……分かったのだよ」

赤司が姫の肩を抱きどこかへ行こうとしたとき姫は慌てたようにこちらを振り向いた

「真太郎!差し入れ何が良いか考えておいてね!!」

「あ、ああ…」

「…差し入れ?どういうことだ」

「今度部活に差し入れ持っていくって話してたんです」

「へえ。…もちろん俺の湯豆腐の方が愛情が詰まっているんだろう?」

「ま、まあそれは……っていつの間に湯豆腐!?あ、じゃあね真太郎」


肩を並べ仲睦まじく歩く二人を見送り自嘲めいた笑みを一人浮かべる


姫を見たら脈が速くなる。声を聞くだけで幸せだ。手料理が食べたい。他の男と笑ってるお前を見たくない


これは恋なのだと


気づいたときには、遅かった


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