置いてください
※黒子←黄瀬←夢主←黒子
※切、報われない



「あ、黒子っちー!」

「…なんですか」

「今日も可愛いっスね!」

「嬉しくないです。暑いので離れてください」

黒子くんは出会い頭に抱き着いてくる涼太をうんざりしたように引きはがす


その様子を見ていた私は微笑ましく思うのと同時に黒子くんに嫉妬心を抱いていた

だって涼太の彼女は私なのにそういうことは全然してくれないから

涼太はの気持ちは私じゃなくて黒子くんに向けられている

それを分かって付き合ってる私も私だけど


「……さん、姫さん」

「うわっ、黒子くん?どうしたの」

涼太と話していた黒子くんがいつの間にか近くにいて驚いた

「黄瀬君がファンの方に囲まれてしまったので」

「え?あー…本当だ」

見ると確かに大勢の着飾った女性に囲まれている涼太が見えた

その顔は決して嫌がってるようには見えないが実はかなり怒っていることがわかる

こめかみがぴくぴくと動いているしこちらにちらちらと視線を送っているから

相手が私じゃなくて黒子くんなのが切ないけど

「…黄瀬君が女性に囲まれているのは嫌ですか」

「そういうわけじゃないんだけど…うん、やっぱ嫌かな」


「僕なら君にそんな思いさせません」

「え…?」


思わず黒子くんに視線を移すと彼もまた私を見ていた

「僕なら君に不快な思いをさせたりしません。黄瀬くんのことなんて忘れさせてあげます。今からでも僕にしませんか」


黒子くんから感じる明確な好意

真っ直ぐすぎるほど真摯に私を見つめる視線

逸らしたいのに逸らせない

「僕が君を幸せにしてあげます」

そう言って差し出される手

その手をとれば私はきっと楽になれるんだろう

でも私の答えは決まってる

「黒子くんごめんね」

「佐藤さん…」

「二人ともお待たせ!そうそう話の続きなんスけど今日は三人で食べよう!黒子っちもいれて!ね?」

ねだるように私に視線をやる涼太に頷く

「うん三人の方が楽しいよ」

「……誘ってもらえて光栄ですが今日は一人で食べたい気分です。失礼します」

「そうなんスか…。じゃまたね!黒子っち」


涼太が去っていく黒子くんを止めなかったのは私たちの空気に気づいたからかもしれない

そしてこの男は私には遠慮しない

「黒子っちと何話してたんスか?」「…別になにも。それより早くご飯食べに行こう」

「…ふーん。そうスね、行こう」

言えない

黒子くんの告白を断ったなんて

そんなことを言ったら私はもう利用価値がなくなってしまう

だって涼太が私と付き合ってくれてるのは黒子くんが私を好きだから

彼の目に映る時間を増やしたかったんだろう

それに気づいたときはショックで信じたくなかったけど今では痛いほど分かってる

「…黒子っち、元気なかったなー」

「そうだね」

きっといつかは私から離れてしまう

それが分かってるのに自分から別れを切り出せない

お願いだから涼太

まだ私を隣に置いていてください



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