君のチョコを独り占め


「バレンタインかー」


そう、今日は女の子も男もドキドキする日、バレンタインだ


自分もこのイベントに幾度となく胸を高鳴らせ、幾度となくその期待は崩れてきた


幼なじみで昔から仲が良いあいつは毎年チョコをくれるけれど、ハートの真ん中に義理という文字が堂々と書かれている


もううんざりするほど毎年


聞けばあげてるのは和成だけだけど勘違いされたら困るから…てさ


それでも今年こそは本命をくれるかもしれないと期待を捨てきれない


「オレって意外と女々しいのかもなー…っともうこんな時間か」


今日は真ちゃんを迎えに行く前に姫を迎えにいかなければならない


急いで家を飛び出した



「姫ー」


チャイムを鳴らしても返事がない


不思議に思ったオレは厚かましくも勝手に入ることにした


「お、すげー匂い」


「わ、和成!?ま、待って」


「いいっしょ今更。オレとお前の仲だろ?」


「だからって…あ、見ちゃだめ!」


姫の家のキッチンには箱に包まれラッピングを待っているチョコが2つ並んでいた


「2つ…ってことは今年はオレ以外にもやんの?」


尋ねると、姫は顔を真っ赤にさせて頷いた


え…何だよその反応……


「その…お世話になってるし和成と、緑間くんに…」


あーそういうこと?口では何と言おうが真っ赤なその顔では何の説得力もないし気づくなという方が無理だろう


「…ふーん」


「あ、駄目!」


チョコの箱を取ると昔から変わらないハート形のチョコケーキがあった


違うのは、それが二つあること。そして義理と書かれたチョコの隣には本命と書かれたものが…


もう苦笑いするしかなくオレは義理とデコレーションされた方を迷わずとり口に入れた


今年はビター風味なのかほんのり苦い気がする


「あ…!」


「今年もサンキューな、姫」


目の前の姫の顔が曇る。オレは笑えていないのだろうか


「……それ…和成のじゃない」


「…えぇ!?」


そんなはずはない

自分はちゃんと義理の方を食べたはずだ


確認すると、本命が残っていた

「びっくりさせんなよ。間違ってねーじゃん」


「…間違ってるよ」


姫はちょっと拗ねたように唇を尖らせ本命のチョコを持ち上げる


「私がこれを渡したかったのは和成だったのに」


「え…」


「いらないなら自分で」


「ほしい!マジほしいから!!」


彼女は涙目で残ったチョコをオレに押し付けてきた

「……」


「あーその、サンキューな」

「好き、なんだけど」

「…マジ?」

「まじまじ。女の子に言わせるなんて和成って本当」

「ごめんごめんオレと付き合ってよ」

「…軽い」

「好きだって」

「てか和成のせいで緑間くんにあげるやつなくなっちゃったからチロル」


「それは駄目だぜ」


オレは彼女からチロルチョコを奪い勝手に食べる

「義理でも他の男にやんなよ」

「何でよ」


「…オレが嫌だから」

君のチョコを独り占め



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