ファンから君を


スポットライトを浴びる君の姿を初めて見ていつも明るいその笑顔が凄く遠いみたいに感じた

抜けてるところやからかうと面白いところとか気に入っていたけどそれはファンである彼らにも見せてるわけで。その笑顔は彼らのものなわけで?

何か良く分からないけどアイドルとしての君は、凄く眩しかった

ライブが終わったら君はいつも通り僕らの近くで笑うけど僕の心はなかなか晴れない

「カノさん?どうしたんですか」

「ん?なんでもないよ。心配してくれるなんて優しいじゃないキサラギちゃん!」

大袈裟なくらい身振り手振りで感情を伝える僕を見て彼女はもっと心配そうな顔をした

「カノさん……なんか元気ないです、よね」

「…」

ああ、僕は本当にダメだなって思う。人に弱いとこを見せたくないのに君なら良いかな、なんて思っちゃうんだ。欺いて逃れるのは簡単だけどしたくない。だってそれは彼女を傷つけてしまうよね?

「スポットライトを浴びてる君、凄く格好良かったよ」

「ほ、本当ですか!えへへ」

はにかむその表情も可愛いいし、見れば見るほどアイドルなんだと思わせる

でも僕はやっぱりダメだな。言えないよこんな本心。君を縛り付けてしまうかもしれない言葉なんて、伝えられない。僕だけのものになってなんて、言えないよ

「でも、今はアイドルじゃないですから」

「……え?」

「今はカノさんと話してる普通の女の子です」

ウインクしながらそう言う少女の顔は赤く染まっており、大勢いるファンの前で話す姿とはまるで別人だ

「ぷ、くく…」

「ええ!?何で笑うんですか!」

「なん、でもないよキサラギちゃ…ぶぶっ」

「笑ってるじゃないですか!!」

赤くなっていたのを誤魔化すように膨らませたその頬に指を突っ込んで萎ませる

「拗ねないの」

「すねてません!」

「拗ねてるじゃない…」

前言撤回。やっぱりこの子は僕のものだ。譲ったりできない

「確かに、普通の女の子だね」

「そ、そうなんです。だから、その……」

これ以上ないくらい真っ赤になってしまう彼女の口に人差し指をあて黙らせる。それくらい僕から言わせてくれないと流石に格好つかないじゃない?

「だから好きだよ。アイドルとしての君もだけどいつもの君が凄く好きなんだ。普通の君は普通の僕と付き合ってくれる?」

「っ……!」

「返事は?」

「付き、合います」

「ふふ、それだけ?」

促すと、照れながら口を開いた。彼女はまっすぐにこちらを見ながら

「好きです、カノさん」

「……まいったな。奪われちゃったよ」

目が離せない君に、僕の心ごと

でも全然嫌じゃない。これからが楽しみすぎて怖いくらいだよ

まずはファンの目の前で君を拐ってみようかな。最高に気分が良いだろうね!


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