「遅いなあ。まだ終わらないの?」
「誰のせいだと……」
目の前でニヤニヤしているカノを睨む。私が現在進行形で掃除をしているのは紛れも無くこいつのせいなのだが手伝うどころか話しかけて邪魔をしてくる。おかげで一向に終わらない
「カノがテーブルの上に置いてあった飲み物を落としたんでしょ!?少しは手伝ってよ!」
「えー?手疲れるから嫌だよ」
「キドが帰ってきたら怒られるよ」
「よし片付けよう!僕布巾持ってくる!!」
足早に駆けていくカノを見送ってまたもや床に零れた飲み物を拭く。誰よおしること見せかけて炭酸飲んだのは……!おかげでベトベトだ。
「ナツキー」
「きゃっ!?か、カノ?」
後ろからいきなりカノが抱き着いてきた。いきなりの接触に胸を高鳴らせたのも束の間、カノからお酒の臭いがする。……この団体に酒を飲む人なんて見当たらないが大方誰かが間違えて買ったのだろう。天然しかいないからなここは
「ナツキーぎゅってしてぎゅーって」
「わああああやめてええ」
いつものカノを知ってる人間としては気持ち悪いだけだが外見はいい男なのだ。外見は!こんな美少年に甘えられたら心臓に悪い。しかしカノだ。カノだってことは分かっているのに……!
「……くく」
「え!?あ、騙したの!?」
今まで可愛らしい声で甘えていたのにいきなり男らしい声が聞こえたのでカノの顔を見たら腹立つくらいの爽やかとは程遠い笑顔を浮かべていた
「ぷっ!あはは!ナツキやっと気づいたの!?はは最高!」
「さ、最悪……」
こんな男にドキドキさせられたと思うと自分が恥ずかしい。
「ナツキってば本当からかいがい甲斐があるよねえ」
「なくていいよそんなの……」
「いやいや、ないと僕が楽しくないよ。てかそろそろナツキ僕のモノにならない?」
「…どうせそれも冗談なんでしょ」
「……ちゃんと本気だよ。信じてもらえなくても、ね」
その言葉にカノへ視線をやるが相変わらず嘘臭い作り笑顔を浮かべていた。しかしいつもと違うのは顔と耳が赤いこと、力強く抱きしめられたままの腕が震えていること
「……本気なの?」
「悔しいけど本気で好き。……あーもう見ないでよ赤いでしょ顔」
そうは言ってもカノの手によって目を塞がれた今見たくても見れない。ただ年相応な行動が可愛らしくてクスッと笑う。すると頬に暖かい感触。なんだろうと考えていると不意にカノが笑う気配を感じた
「今のは笑ったお仕置き。早く返事しないともっとお仕置きするからね」
「えっ……!ま、待って」
「待たない。早く」
待ってよ!つまりさっきのは頬にキスされたってことでつまりカノの唇が私の……!ああもう考えられない!!!
「ナツキ?」
「わ、私もカノのこと好き!……かも」
一瞬の間
「ぶっ!はは、かもって!かもって何!?ははは!もう可愛いなあ」
「笑わないでよ!私だっていっぱいいっぱいで……」
「分かってるよ。ありがとねナツキ」
「……」
さっきまでの態度は何だったのか。すでに平生を取り戻したカノはニヤニヤと意地悪く私を見つめる
どうやら私はとんでもない男に捕まったようです
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