一人称が俺で男みたいな格好してそれで誤魔化せると思ってないよね?
俺には女の子にしか見えないよ
「なあキド」
「…なんだ」
「これ着て見せてくれよ」
「なっ………!?」
これ、と言って取り出したのはフリルのスカートだ。何を隠そうこれはキドの私物だ。紛れも無く
「お、お前…それをどこで……!!」
「カノがくれた。つーか何でカノが知ってて俺が知らないんだよ。ちょっとショックだな」
わざと落ち込んでみせるとキドは面白いくらい慌てて近寄ってきた
「お、おい大袈裟だな。どうでもいいだろう、そんなこと。というかナツキに関係な…」
「そんなこと?関係ない?あー傷ついた心がいてー」
「すまない、大丈夫か?」
心配そうに見上げてくるキドを自分の膝の上に乗せた
「ちょ…お、お前……!」
「あー柔らけぇー」
「やめろ馬鹿!!」
こういう風に抱き着いたり触れ合うのは俺だけだ。普段から親しい者には表情を変えるキドのここまで照れた顔を見れるなも多分俺だけ。シンタローやセト、カノには絶対させないだろう。かといって俺もキドと付き合ってるわけではない。そうなりたいとは思っているけれども
「キド可愛いー」
「…俺が可愛いなんて言う奴お前だけだぞ。…ナツキの目はおかしいんじゃないのか」
「おかしくないよ。キド好きー癒される……」
キドのフードごと髪に顔を埋めると小さく反応した
「…誰にでもそう、歯の浮くような台詞を言っているんじゃないだろうな」
「言わないよ。キドも知ってるでしょ?俺がマリーやキサラギとは全然話さないこと。こう見えて硬派なんだよね」
「…しかし…二人の方がその、可愛いしナツキもああいう方が好きなんだろう」
普段の姿からは想像できないほど不安そうな顔をして俺を覗き込む。こんなに不安なのはカノがからかってるのが原因だろう。あんな照れ隠しみたいなもの、信じなくていいのに
「ま、そういうとこも好きなんだけど」
「ご、誤魔化すなよ……馬鹿」
「ごめんごめん」
まるで恋人みたいなやり取りだと笑う。ふと開いたドアの隙間からこちらを覗くカノに視線を移した
いつもと同じ何も変わらない笑み。しかし殺気があるような気がするのは気のせいではないだろう
悪いな、カノ
「キド、目にごみついてるよ取ってあげる」
「ああ、頼む……っておい!?」
顔を近づけ額にそっとキスを落とす
「大好きだよ。他の女なんて目に入らないくらい愛してる」
「なっ……!!」
本当可愛いなキドは。どうして今まで告白しなかったんだろうか
カノに気なんて遣わなきゃ良かったかな、なんて思ってもいないことを考える。俺がキドを大切なようにカノもキドが大切で、キドがカノを大切なように俺もあいつが大切なんだ。親友だと思ってる。だから
「本当に……俺で良いんだな?」
「キドが良いんだよ」
「後悔は…」「しない」
「そうか。……じ、実は俺もナツキが好きだった。こんな俺で良いなら」
「ぷ、らしくないな。いつもの自信満々なお前でいてくれよ。どんなキドも好きだからさ」
「ナツキ……」
キドは顔を隠すように俺に抱き付いた。俺も腕の力を強めて深く深く抱きしめる
ふとドアの方を見るとそこには誰もいなかった
悪いな、カノ
お前とキド両方と仲良くなんて不器用な俺にはできそうになかった。嫌いになってくれて構わない。好きなだけ罵ってくれ
だけどこいつは渡せない
なかなか顔をあげようとしないキドの髪を弄ると甘えるように擦り寄ってきた
俺から見れば身長は小さいしクールぶってんのも可愛い。手だってほら、簡単に包めるくらい小さい
「お前本当、女っぽいよな」
「…良い眼科を紹介するぞ」
腕の中のこいつは、俺のもの
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