まずい。非常にまずい
「ねえシンタローくん」
「……」
「シンタローくん?」
お隣りに引っ越してきた彼女に恋をして早2年。最初はあまり話すこともなかったのだけどここ最近家から出ない俺を心配して毎日来てくれる。
そのことは正直嬉しいしナツキさんから漂う良い匂いの効果もあり18才(DT)な俺の胸は簡単に高鳴ってしまう
いやそんなことはどうでもいい。何がまずいってこの状況
俺が某動画サイトを起動しつつエネといつも通り話してる最中に母が突然俺になんの断りもなくナツキさんを部屋に入れてしまった
つまり……俺が一人でディスプレイに映ってる女の子と話してるという何とも言えない寂しい図を見られたということで…泣いていいですか
俺は涙を堪えいつも通りの無表情を装い気にしてないふりをする
「あ、あのっ……散らかっててすみません……」
終わったー……思い切りボソボソと喋る不気味な声になってしまった
さよなら俺の恋愛……
しかしナツキさんは穏やかに笑う
「大丈夫だよ。ねえこれ彼女?」
「違っ…違いますよ!」
エネを指し尋ねるナツキさんに手を振り否定する
「それはそういうソフト…みたいな」
しまったと思ったときには遅かった。これでは俺が話し相手を求めてソフトを買ったと思われてしまうじゃないか
しかしやはりナツキさんは優しく微笑むのだ
「へえー。可愛いなあこのこ」
そう言うナツキの方が可愛いよ。なんて口が裂けても言えない
ナツキさんはエネに興味を失ったらしく俺のベッドに寝転んだ
「え…!ナツキさん!?」
「んーシンタローくんの匂いがするー…」
「え…!ま、まさかそんなに臭いなんて…」
「ふふ、慌てすぎ、良い匂いだよ」
俺は真っ赤になって俯く
二年間俺も成長したのに彼女には本当敵わない
嗚呼……どうか俺のDTを貰って頂けないだろうか
「いいよ」
「ええ!!…ほ、本当ですか」
「ん?うん。エネちゃんがまた来てくれって」
「は……」
パソコンを見るとニヤニヤと笑うエネ
「ご主人のためにもまた来てくださいね!!」
「うん!あ、そろそろ帰らないと…またねシンタローくん」
「あ、……は、はいまた…」
最後までコミュ障全開な自分が情けない
すれ違い様に彼女こそシャンプーの良い匂いがした。ああ無垢な俺の心をどれだけわしづかみにすれば気が済むのだろうか
「…ご主人、ニヤニヤしすぎ。気持ち悪いです」
「うるさいな!今余韻に浸ってるとこなんだから大人しくしてくれ!!」
「うわあ……」
最上級に引いたエネに構ってる余裕なんかない。いますぐこの気持ちをメモしなければ……!
そしていつの日かナツキさんを想った曲でCDデビュー……!
「ご主人鼻の下伸びてますよ」
俺の片想いはこれからも続くことだろう
しかしいつの日か…こんな俺を受け止めてくれる日を待ち続けるんだ!
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