「サツキ……すか?」
「そ、そうだよ」
きっと今自分はひどく驚いた顔をしているだろう。いつも女の子らしい服装なのにいきなり大人っぽい格好で待ち合わせ場所に現れたサツキにらしくもなく緊張してしまう
「なんていうか…いつもと雰囲気違うっすね。でも凄く似合ってるっす!」
「あ、ありがとう!」
大胆に胸元が開いた服に少し背伸びした高いヒール。知らない子と話してるみたいだったが恥ずかしそうに丈の短いスカートを押さえているサツキはいつもと同じで可愛い。それを見たら緊張なんかどこかへ行ってしまった
「じゃあどこ行く?セトが行きたいとこ行こうよ」
「んー。そうっすねえ……」
少しの間考えるが行きたい場所が思いつかない。というか、サツキが居れば正直どこでも良い
「遠くまで散歩したいっす」
「散歩?セトってやっぱり体動かすの好きだよね!」
「気持ち良いっすからね!サツキもたまには沢山動くと良いっす」
「えー」
「はは、冗談っすよ!」
サツキの手を自然にとったら彼女の尖っていた唇が弧を描いた。今日も笑顔で過ごせそうだ
「セトー。寒い」
「俺もっす……」
会話をしながら歩いてると道に迷った。しかも天気は悪いし人の気配もない。厚い雲から今にも雨が降ってきそうだ
「ん、冷た…」
「と、降ってきたっすね。あそこで雨宿りした方がいいっす」
サツキの頭にぽつりと一滴、また一滴と雨が落ちてくる。近くにあった古いバス停みたいな場所に二人で雨を凌ぐ
そこは狭くお互いの肩が触れあうくらい近付かないとどちらかが雨に濡れてしまう
「サツキ、こっちに寄らないと濡れてちゃうっす」
「で、でも……」
「ほら」
「わあっ、セト……!」
サツキを引き寄せ後ろから自分の腕に閉じ込める。ふわふわな髪から良い匂いがして思いっきり吸い込むとサツキが身じろぎしながら抵抗した
「恥ずかしいから止めて…」
「駄目。もっと嗅ぎたいっす」
柔らかい彼女の身体全体から良い匂いがして目眩がしそうだ。薄着で冷たいサツキの肌に自分の体温が移っていけば良いと思いながら腕の力を強くする
「セト…」
「何で急に大人っぽい格好してるんすか?」
「えっ…!」
気になっていたことを聞くと彼女の体がビクッと震えた
「……笑わない?」
「笑わないっすよ」
「………で、……………だから」
「え?聞こえなかったっす」
「っ…、テレビで、たまには印象を変えないと彼氏に飽きられちゃうっていってたから!」
沈黙が辺りに流れる。見えないが顔を真っ赤にしてるだろうサツキは耳まで真っ赤だ。
「は、ははは!なんすかそれ!ははっ」
「わ、笑わないって言ったのに…。いいじゃん。浮気とかしてほしくないし……」
堪えきれず笑みが溢れ出た。だって可愛い!可愛いっすよサツキってば!
「拗ねないでほしいっす!嬉しかったんすよ」
「なんで?」
「俺を自分のとこに繋ぎ止めたいんすよね?でもそんなに不安にならなくても大丈夫っすよ!俺は生涯サツキが好きっすから!!」
「ばっ……ばか……大好き」
「はははは!ありがとうっす」
やっぱり君と居ると飽きない。笑顔にさせてくれるし天気が雨でも心を晴れにしてくれる
きっと明日も明後日も来年もずっと
いつの間にか俺の体温がサツキに移っていた
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