身長会議
「ていうかキサラギちゃんさあ…意外に大きいよね」

「そうですか?」

その場に居たメカクシ団の全員がこちらを向いた。特にシンタローくんが何か言いたそうに僕を見ている

「そういうカノは意外と小さいよな」

「それは言わないでシンタローくん!これでも結構気にしてるんだからね!?」

「いや言うか迷ったんだけどさ」

なら言わないでよ!

「お前等は朝から何の話をしてるんだ…」

ため息混じりでキドが呟いたのを僕は聞き逃さ なかった。すぐにキドに近よりにやにやとした 笑顔を浮かべる

「何って…分かってるでしょ?キド」

「そ、そりゃあ…まあ。い、いや知らん!俺にはわからない!」

顔を赤くして勢いよく首を横に振る。あーあそんな否定しちゃって。何の話だと思ってるんだか

「わかんないことないでしょ?子供じゃないんだから」

「くっ……知るか!興味もない……」

あーやばいニヤニヤが止まらないよ。本当からかいがいがあるよね

「そっかあ。まあキドは十分大きいもんね。……身長!」

「は?」

「ぷっ !く、くくく…な、何の話だと…思った の?ははっ」

押さえきれない笑みが身体を駆け巡る。きょとんとした様子のキドは、意味に気づき照れか怒りでこれ以上ないくらい顔が真っ赤になった。できれば前者なら嬉しい

「…お前……」

「ご、ごめんってばキド…うわあ!」

「ふん」

殴られたみぞおちが痛い。お腹を押さえうずくまっているとマリーの頭を撫でていたセトが笑いながら話しかけてきた

「身長の話だったんすね!てっきりマリーに聞かせたら駄目な話だと思ったっす!」

「ええ!?」

「……俺も」

「シンタローくんも!?え、じゃあ小さいって 何の…いつ見たの!!」

「言って良いのか?」

「やめてくださいお願いします」

なんだこの純粋そうで不純な集団…不意打ちの衝撃にお腹の痛みも治まった

「まあ確かにモモは意外とあるよな」

「だよね!?最初158cmくらいだと思ってたけど目線が近いからさ」

「カノさんは何センチでしたっけ」

「165!」

キサラギちゃんの質問に答えた途端僕より身長高い人たちの顔に笑みが浮かんだのを見逃さなかった。……そんな小さいかな?

「なら俺とキサラギの間にカノが入るんだな」

「なにその表現!?別に悲しくなんてないから!身長なんて別に……」

「お前俺より外出てたのにな」

「哀れむような眼差しで見ないでよ!ていうかシンタローくんヒキニートだったくせになんで172もあるの?」

キサラギちゃんとシンタローくんが顔を見合わせ遺伝子の違いだと言い出した。なにそれ僕の身長が高くなる可能性ないって言ってるの?

「まあまあ!カノもまだ成長期じゃないっすか!これからっすよ!」

「セト……!」

セトの言葉に感動してるとコノハが僕を見て首を傾げた

「僕もまだ伸びるかな?」

「君はもう充分でしょ」

「お前は何センチあるんだ?」

「コノハは182cmですよご主人!」

エネちゃんが答えた瞬間みんなの視線はコノハくんから彼女に移る

「そういえばエネちゃんは何センチ?」

「というか、お前身長とかあるのか?」

キドが怪訝そうな顔で聞くが気持ちはわかる。彼女の足を見たことがないし、何よりエネちゃ んは画面の中にいる。身長なんて存在するのだろうか

「身長くらいありますよー。640pxlです」

「は」

僕やキド、セトやマリーは呆気に取られた顔をした。シンタローくんが解説をしてくれるが全くわからない。とりあえず近くにいた彼の妹に聞いてみるか

「キサラギちゃん…」

「すみません、わかんないです…」

「だよねえ」

意味不明なシンタローくんの解説を止めて話はマリーへ

「マリーは」

「154cmっす!」

誰もセトには聞いていなかったが善意で答えてくれた

「マリーも意外と高いな」

「……そう、かな」

「ああ。最初140くらいかと思ったよ」

「140だったらヒビヤくんくらいじゃない?」

突然話を振られたヒビヤくんは、面倒くさそうに目を逸らす。その顔は若干不機嫌だ

「……140cmだけど。何か文句でもあるの」

「まあまあ!ヒビヤくんだってこれから伸びるって!」

「うるさいよ。おばさん」

「おばっ…」

宥めようとしたキサラギちゃんがおばさん呼びにぶちギレる寸前でシンタローくんがその手を掴み止めた

「離してお兄ちゃん!一回!一回つねるだけだから!」

「……」

ヒビヤくんはそっとキドとセトの間に入り込んで座った。あれそこ僕の位置…。しかしなかなか賢明な判断だろう。あそこならキサラギちゃんも手出しできない

「くう……!」

「落ち着けモモ」

「…はあ、仕方ないなあ。今回だけだよ」

「ほら、お前も謝れ」

キドに促され、ヒビヤくんはぽつりと一言

「ごめんね………おばさん」

最後の言葉は本当に小さくてキサラギちゃんには届かなかったらしい。だから僕らも聞いてないふりを決めた

メカクシ団のとある休日はこうして更けていった


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