壁ドン


「ねえカノお願い」

「今忙しいからムリ。後でねー」

適当な扱いに頬を膨らますもカノは知らんぷり。何してるのか知らないけどポッキーゲームくらいすぐ終わるししてくれてもいいじゃない……

「カノ、んー」

「待ってもう終わるから…ふふ、どんな反応か楽しみだなあ」

楽しそうなカノを見ながら咥えていたポッキーを噛んで飲み込む。普段はうざいくらい構ってくるのに私が構ってほしいときは構ってくれないなんて…おもしろくない

不満が募った私は壁に何か描いているカノの手を握り適当に書き回した

「ちょ、ちょっと何してるのサツキ!?」

元の絵が分からないくらいぐっちゃぐっちゃに塗りつぶしたそれを見て少しやり過ぎたかなと反省する。謝ろうとカノに視線を移したときその威圧感に気づいた。まずい…かなり怒っている……!

「サツキ…」

カノは笑顔のまま、しかし確実に怒りを溢れだしながらこちらへずんずん近づいてくる

「ご、ごめんカノ…きゃあっ」

壁に押し付けられ首を押さえられてま身動きが取れなくなった。振りほどこうにも力が強くてできない

「なんだっけ?ああポッキーゲームしたいんだったね。良いよしよっか。ほら口あけて」

カノは片方の手で私の腕を一括りにまとめ、もう片方の手でポッキーを取りだし咥えた。チョコがたくさんある部分を食べるところが非常に彼らしい

「ん…はい、あーん」

カノの顔がポッキーを咥えたまま近づいてくる。促され反対側からポッキーを咥える。

さくさくと音が鳴るにつれ徐々に近づく二人の距離。唇と唇がくっつくくらいになったときカノの動きが止まった

「………」

試されている。私は今、試されているんだ。ポッキーを噛みきって逃げるか進んでキスするか試されている

迷うことはない。このまま進めば良いだけ。それなのに迷ってしまうのはこんな至近距離でカノが私をガン見してくるからだ。

見ないでほしいと願うが、これがきっとお仕置きなんだろう。覚悟を決め唇を進めた

「んっ…んん!?」

唇がくっついた途端カノが舌を入れてきて絡めとられる。逃げようとしてもなかなか離してくれない。チョコの味もしなくなりお互いのしか感じなくなったときやっと離れた

「ふ、は、カノ……」

「ふふ、お仕置き。あーあ折角君の絵を壁一面に書いてあげようと思ってたのに。残念だなあ」

「絵!?カノ私の絵を描いてくれてたの!?」

「そうだよ?もうすぐ完成だったのに…」

はあ、と溜め息を吐いたカノを見て、罪悪感が増す

「あ、じゃあお詫びに私がカノを書くよ!ね?」

そう言うとカノは目を見開いた後、愉快そうに笑った。その笑顔が私にも移ってカノは照れくさそうにする

「じゃあ……楽しみにしてようかな」

「うん!」

こんな何でもない1日が私の絵を見て大爆笑したカノによって地獄になるなんて誰も思わなかったでしょう。それはまた別のお話し


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