※死ネタ
「なんで…お前まで」
哀しげな瞳で佇むシンタローの傍に私は立っていた。いや、違う。浮いているかな。もう足すらないから
「お前まで居なくなって…俺はどうすればいいんだ……!」
膝から崩れる彼を支えようと咄嗟に動いたこの手は虚しくもすり抜けて、シンタローは痛そうな音を立て座りこんだ。
ごめん。ごめんね。シンタロー
今の私じゃ、貴方を支えることもできないの
「ずっと一緒にいてくれるって、…約束したじゃねえかよ……!嘘つきは嫌いだって、知ってるくせに…」
その約束もあなたから見たら嘘にしちゃったね。でも、私は君との約束は絶対に破ったりしない
「っ……ああ、お前死んだんだな。なんか、…やっと実感…つうか」
シンタローの瞳からは大粒の涙が流れていた。綺麗な顔は悲しみに歪んでも綺麗なままなんだなと思う。彼の瞳は、一片の曇りもない
「うわ、なんか涙でてきた……ずっと墓参り来れなくて悪かった。…っ、なんか、来たらお前が死んだって、実感しそうで…」
どんどん溢れ出る涙を拭いもせず私に語りかけるシンタロー。その背中を今すぐ擦りたい。大丈夫だよって、私は幸せだったよって伝えたい
「お前と…、ずっと、…一緒にいたかっ……たのに。……死んでんじゃねえよ…サツキっ……!」
こんなに近くに居るのに触れることさえできない。歯がゆさに身を震わせる
「どうして、俺の大事な人は、みんな……」
ねえ、今隣にあの子がいるの。少し悲しそうに笑ってるよ?女の子泣かせちゃ駄目じゃない。
その子はね、もう行くんだって。上に。天国に。成仏っていうのかな?今までシンタローを守ってくれてたんだよ。知らないよね
バイバイと別れを告げ赤いマフラーの少女は天へ導かれるみたいに光る粒子となって溶けていった
「っ、ふ、うう、ああもう、行かなきゃ…じゃあな。サツキ……また来る」
ありがとう。本当にありがとう。でもたまに私を思い出してくれる。それだけでも、充分なんだよ?
私は、綺麗に洗われたお墓にある自分の力を振り絞ってシンタローを抱き締めた。今この場所でしかできないこと。最後の、最期の包容
死んでも守るから。貴方を。貴方との約束を
君が私の存在を思い出してくれる限り、私は君の傍に居ることができる
「気のせいか……。…頑張るよサツキ」
歩き始めたシンタローの周りは、新しい門出に向かう彼を祝福するように光が降り注いでいた