仲の良い女の子がいる。少し勝ち気で意地悪でちょっぴり寂しがり屋なその子は僕の彼女だ
用事がないときぷらりと街を歩いていたら偶然出会った少女。何を言うこともなく僕たちはお互いが似ていることを感じて以来何となく一緒に時間を潰すようになり、何となく付き合っていた。それなのに
「……なんで?別れたいの、僕と」
絞り出した声は掠れていた。ああ、駄目だ誤魔化せない。その程度には好きだったみたい。自分でも気付かなかったけど
「だってカノ、つまんないんだもん」
「僕がつまらない?それ凄く心外だよ」
「嘘。本当は僕なんて、って思ってるでしょ」
言葉につまる。本当にそうだから
だってつまんないでしょ?いつも笑顔なだけの僕といたって。楽しいはずがない
「それに、人を騙す楽しい気持ちをわかり会えると思ってたのに全然だし」
「…それこそ心外だって。いつも君と一緒に楽しんできたじゃないか」
僕の言葉に彼女は悲しそうな顔をした。その唇が紡いだ。こんなときまで笑ったふりするんだね、って。ねえ何を言ってるの?
「人を馬鹿にするときのカノ、偽者でしょ?本当は人を馬鹿にするなんてしたくないんでしょ?私にあわせるために付き合ってくれてたんだよね」
「違う。僕は……!」
「もういい。もういいよ。カノ」
ハッとしてサツキを見る。その瞳には涙が溢れていた
「嘘つかなくていいから。もう、私のために人を馬鹿にしなくていいから」
「でも、それじゃあ君は…」
両親がいない彼女は詐欺師として生計をたてている。嘘を吐くのが得意だった僕はそれに加担していたのだけれど、人を騙すのは、別に嫌いじゃないんだ。だってさ、悪いことは駄目だけど馬鹿な奴が引っ掛かったら気持ちいいじゃん?
何度そう言っても彼女の意見は変わらない
「…別れたくない」
彼女に言った言葉は紛れもなく本心だった。
「…別れてカノ。お願い」
「嫌だ。嫌だよ。ねえ、泣くくらい僕が好きな癖にどうして…!」
「っ、私はもう、嘘なんて吐きたくないっ!!」
腕を掴もうとした手を振り払われ叶わなかった。そのままサツキは走り去ってしまう。
僕は誰にも気付かれないように沢山泣いた。理由もわからずにずっとずっと
置いていかれた。僕は、置いていかれたんだ。変わりたい彼女に気づきもしないで支えになるつもりが足枷にしかなってなかったんだ。
ねえ、嘘つきは嫌いだったんだね。なら本音をいうよ。君が嫌いだと感じる人間になりたくないから。好きだよ。好きだった。少し悪どい表情も思いっきり笑った顔も不意討ちに照れる顔も全部全部忘れないよ
いつまでも、忘れない。
そう決心した3ヶ月後に詐欺師から足を洗って一般職に就いた君と再び付き合い始めたのはまた別のお話し
嫌だったのは僕に嘘を吐かせてる自分、なんて呆れちゃうよ
でも君が頑張って変わったからには僕も頑張らないとね
じゃあまずはちょっと照れるけど、この愛を伝えるよ。嘘じゃない本心を
ちょっと長くなると思うけどちゃんと聞いてね?
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