あのこ参加させていただきました
俺の好きな子は、とても惚れやすい。ミーハーといえば聞こえはいいかもしれないけど見た目が良いから男子生徒の人気もあり性格も明るくて女子からの評判も良い
つまり何が言いたいのかっていうと嫌われたくないから姫の惚れっぽさを咎める奴なんて俺しかいない。これが大いに不満なわけで
「ねえ聞いて徹、好きな人できた!」
「はは、それ何回目」
「今回は本当に!もう運命っていうくらいこう…頭にビビっときたのっ」
「ふーん。で、今度は誰?」
正直こいつからの恋愛話は聞き飽きている。最初は顔真っ赤にして俺に引っ付いてきたくせにいざ付き合ったらやっぱり徹は人気者だし彼氏とは何か違うから友達になってほしいとか舐めてんの?いやお前がそれでいいなら別にいいけどね。
相談してきた奴これで何人目?
姫は最初はサッカー部の先輩、次にバスケ部のイケメン、その次は…金田一とか俺の後輩にまで手を出してそいつら全員を振り向かせといてふっている。だからどこかで思ってた。姫が本気になることなんてないって
「聞いてる?」
「もー俺が聞いてないわけないでしょー」
「そうかな…まいいや。それでね前練習試合やってたじゃん」
「烏野のこと?」
「そう!そこ。その…ね笑わないでよ?」
恥ずかしがる彼女を見て俺は驚く。だって今までそんな姿見せたことなかったじゃない。本気ってこと?本気で烏野の誰かに惚れたわけ?坊主頭それとも優しそうな雰囲気のやついやまさか10番ではないだろう。他にあそこには……
そこまで考えてやっと気づく。まさかまさかまさか
「徹と同じ中学だよね?影山くん」
その笑顔と唇から紡がれた名前に何かが崩れ落ちる音がした
「…ああ、知ってるよ。良く」
「良かった!いっぱい教えて。私影山くんのこと沢山知りたい!」
「…一応聞くけどどこに惚れたの」
野暮かと思ったがなりふりなんてかまってられない。俺やあいつらと何が違うというのか
「ストイックで不器用なとこが可愛くて…守ってあげたいし私も守られたいっていうか……言わせないでよ!」
彼女がはにかむたび胸の奥がどす黒い気持ちでいっぱいになっていく
退屈な毎日を吹き飛ばしてくれそうだから告白を受け入れたのにいつの間にこんなに好きになったんだろう。楽しそうにキラキラした目で俺を映すことはもうないの?…なんて、こんなこと思うのも何回目だろうね、俺
この気持ちをぶつけたら姫は困るかな困るだろうな。困らせたいけどできないよ
「こんなに好きになったのはじめてかも…」
ああそうやってまた今の状況分かってんの俺と二人きりなんだよ。ここにいない奴を思い出さないで俺だけ見てよ
そんな本心を隠し穏やかな笑みを作る。だってこれしかないでしょ?俺が君といられる方法なんて
君に恋なんてしなきゃよかったって言ってみたい
想うだけでこんなに苦しいなんて