昔から女には不自由しなかった。整っている外見だと言われているし自分でもそう思う
昔見た童話に憧れ運命の女性との出会いを求めて自分に釣り合う外見を持つ女性との交際を何度も繰り返し続けてきた。それに文句を唱える奴はいなかったし 女性たちも納得していた。それなのにこの子はどうして、涙を浮かべ俺を睨んでいるのだろう
「……最初からそういうつもりだったんですか」
「どういうつもりのことかな?」
「っ…、1週間で別れるつもりだったんでしょう?」
「そうだよ?だってそれ以上付き合っても意味がないからね
母が言っていた。
「運命の人と出会ったら一瞬で分かるのよ」
「私はお父さんを見た瞬間この人と結婚するって気づいたの」
母の笑顔がとても眩しかったのを今でも覚えている。わかるのはたった一瞬。ならば最大でも1週間で何も感じなかったら無理だろうと思った俺は付き合ってくる女性は皆受け入れ、しかし全て運命を感じなかったため1週間で別れを告げてきた
「姫、どうして泣いてるの」
別れた女性たちは残念そうな顔でありがとうと言ってきたのに
「初めから、1週間なんて決まってたら、告白なんかしませんでした……」
「なんで?」
「…私が、あなたを好きだからです」
「だったら好きな俺と付き合えて嬉しいんじゃないの?今までの彼女は皆…」
いきなり平手が飛んできた。交わすこともできたが受け止める。叩いた姫は俺以上に痛そうな顔をしていた
「それは 、彼女達が及川先輩を飾りとしか見てなかったからです!束の間でも先輩の付き合ってるレッテルが欲しかったんです。先輩の中身なんて見てません」
「…なるほどね。否定はしないよ。で君は他の子とは違うと言うつもり?」
「私は先輩の中身が好きなんです。性格悪いとこも自信家なとこも大好きなんです。この1週間で、もっと好きになりました。だから…離れたくない」
「…姫」
驚いた。俺と離れたくないなんて本心から思う子がいるなんて。打算も欲もない純粋な気持ちで
ああ、いつから俺は汚い人間になっていたんだろう。運命の女性ならこんなに近くにいたのに。なぜ気づかなかったのだろう
純粋に俺を慕ってくれる姫もどうせ及川の彼女なんて称号が欲しかったんだろうと勝手に諦めていた
「ははっ君おもしろいね!本当、どうして気づかなかったんだろ」
「……お、及川先輩…?」
俺は泣きじゃくっていた姫の瞼に唇をおとした。こんなことをするのは初めてだから姫も戸惑っている
「お前が好きだよ姫。さっき別れようって言ったときなんだか胸がもやもやしてさ、なんだろうって思ってたけどきっと姫から離れたくないって寂しさだったんだろうね」
「え?……え?」
未だ状況が呑み込めていない彼女はきょとんとした顔で俺を見る
初めて俺の中身を好きになってくれた君
母に運命の女性、見つけたって知らせなきゃね。嬉しさで口元がにやける
「離さないよ姫。これからも俺の彼女だからね」
その日初めて見た姫の心からの笑顔はあのときの母より綺麗だった
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