電車の君

最近気になる人がいる。どんなに電車が混んでいてもその人が座ってる左右には誰も座らない。座ったらダメなのかなと思ったけど、揺れる電車内で立っているのは嫌だからこの前座っていいですかって聞いたんだ

そしたらその人、驚いた後凄く嬉しそうな顔してゆっくりと頷いてくれたの。見た目は怖いけど意外と可愛い人かもしれない

その人とのやり取りはそれだけだけど凄く気になる。もっと知りたいって思わずにはいられない

「隣良いですか?」

「……」

この前と同じように尋ねると同じように頷いてくれた。私はその人の隣にそっと腰掛ける

「お邪魔します。あ、その制服伊達工業ですよね?何年生…って3年に決まってますよねすみません」

「……2年」

「え!?タメだったんだ!ごめんごめん私姫って言うの。あなたの名前は?」

無言で黙る彼。ちょっと馴れ馴れしすぎたかなと反省しているとボソッと小さな声で返事がきた

「………青根高伸」

「青根君っていうんだ!よろしくね」

名前を教えてくれたことに感動した私は手の平を差し出し握手を求めた。しかし青根君が戸惑いながら私の手に触れようとしたときいきなり電車が大きく揺れる

「きゃ……!」

「っ」

体勢を崩した私を支えようと青根君が引っ張ってくれた。しかしその勢いが強すぎたのか私の身体は青根君に抱き着くようにピタリと密着してしまっていた

「あ、青根君……ごめ」

黙ったままの青根君はいきなり顔を赤くしたと思うと私を押し退けて元の体勢に戻った。しかも顔に手を当て何か考え込んでいる

「あ、青根君?」

「あし…」

「ん?」

「明日も……待ってる」

「え」

電車が伊達工業の近くにあるホームに着き青根君がそそくさと出ていく。


私はその姿を見送る余裕すらなかった

「明日も待ってるって……今日も待っていてくれたってこと?」

自惚れかもしれない。しかし冷静になろうとする頭とは裏腹に治まらない動悸。やばいやばいやばい


最後の言葉を告げたときの彼の表情。期待しちゃうよ?


電車で一人熱い顔を冷ます。きっと私は明日もこの電車に乗るだろう

彼に会うために



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